これまでの「老い」の常識が変わりつつあるという。
若者の職場だったハンバーガーショップや家電量販店などに中高年の従業員が急増中。「過剰介護の禁止」を提唱する理学療法士の講演が大人気。
そして、際どい中高年のネタで会場を沸かす綾小路きみまろのライブも即日完売が続いている。
番組は「変わりつつある『老い』への向き合い方」を取り上げた。
夜勤あり早朝勤務あり
先週の木曜日(2月12日)埼玉県のとあるホールにバスツアーなどで集まった中高年の群。目的は、綾小路きみまろの毒舌漫談ライブで、平日なのに2000人が集まるという盛況ぶりだ。
「1つ覚えて3つ忘れる中高年」「中高年 歯がない毛がない先がない」「オシメで始まりオシメで終わる だからおしめ~だ」
中高年が気にしているポイントを、綾小路きみまろが狙い撃ち。「腹が立たないの?」に……
会場のオバサンは「何にも腹は立たない。本当のことだもの」「真綿で包まれるより、ズバッと言ってくれた方が納得ができる」と。
都心のオフィス街にあるハンバーガーショップ。かつては若者の職場だったのが、いまや半分以上を50歳以上の中高年従業員が占めているという。
仕事も夜勤あり早朝勤務ありで、若者と変わらない。しかも、接客態度など臨機応変の対応は文句なしとか。
現在、65歳以上の高齢者は人口の2割。8年後には、75歳以上が高齢者の半分を占めるという。高齢者自身が「頑張らなくては……」と奮闘するのも頷ける。
「決め手は脳の機能だ」
そんな中で、介護業界にも新風が。「介護業界のきみまろ」という三好春樹・理学療法士が行う講演が、介護、医療に従事する人の間で大人気という。
「老人の性格を変えるより、ネコに社交ダンスを教える方が簡単」と言う三好が説く介護の方法論は「過剰な介護の禁止」。「介護の方法を高齢者に一律に当てはめてはならない」という。
とくに、介護施設のほとんどで転倒防止のために使っているオムツ。三好は「善意の押しつけで、高齢者の力を奪っている」と指摘する。
三好の講演を何度も聴いているという熊本の介護施設の責任者は、三好の教えを実践した結果、寝たきり老人が激減したという。さらに、こうした『老いの常識』を覆すような医学的な根拠も……。
自治医大(栃木県)の苅尾七臣教授は80歳以上の高齢者500人を対象に調査した結果、次のように指摘する。
「余命を決める一番の物を認知する力、脳の機能だ、高血圧や糖尿病といった病気ではなく、物を認知する力、脳の機能だということが分かってきた。脳に一番大切なのは外からの精神的な刺激であり、身体的な刺激ですね。これが脳の力を保っていく秘けつと思う」
ただ、高齢者は精神的、身体的な刺激をといっても、周りが支援しないと難しい。
キャスターの国谷が「何かコツがありますかね~」と。番組に出演したもう一人の毒舌漫談家、毒蝮三太夫(聖徳大学客員教授)が3つの「蝮の心得」を披露したのには納得した。
(1)笑顔で話しかける(2)肩に手をかける(3)気にかける、という「3つのかける」で、高齢者に、役に立っているという有用感を持ってもらうのが大事だという。
高齢者の間に吹き始めた新しい風。これを捉え広げる工夫も必要だろう。数年前に厚労省は、高齢者のための自立支援制度を打ち上げたことがあるが、その後どうなったのか……さっぱり聞こえてこない。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2009年2月18日放送)