過剰介護は「力」を奪う 「余命決め手」は病気でなく…

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「決め手は脳の機能だ」

   そんな中で、介護業界にも新風が。「介護業界のきみまろ」という三好春樹・理学療法士が行う講演が、介護、医療に従事する人の間で大人気という。

   「老人の性格を変えるより、ネコに社交ダンスを教える方が簡単」と言う三好が説く介護の方法論は「過剰な介護の禁止」。「介護の方法を高齢者に一律に当てはめてはならない」という。

   とくに、介護施設のほとんどで転倒防止のために使っているオムツ。三好は「善意の押しつけで、高齢者の力を奪っている」と指摘する。

   三好の講演を何度も聴いているという熊本の介護施設の責任者は、三好の教えを実践した結果、寝たきり老人が激減したという。さらに、こうした『老いの常識』を覆すような医学的な根拠も……。

   自治医大(栃木県)の苅尾七臣教授は80歳以上の高齢者500人を対象に調査した結果、次のように指摘する。

「余命を決める一番の物を認知する力、脳の機能だ、高血圧や糖尿病といった病気ではなく、物を認知する力、脳の機能だということが分かってきた。脳に一番大切なのは外からの精神的な刺激であり、身体的な刺激ですね。これが脳の力を保っていく秘けつと思う」

   ただ、高齢者は精神的、身体的な刺激をといっても、周りが支援しないと難しい。

   キャスターの国谷が「何かコツがありますかね~」と。番組に出演したもう一人の毒舌漫談家、毒蝮三太夫(聖徳大学客員教授)が3つの「蝮の心得」を披露したのには納得した。

   (1)笑顔で話しかける(2)肩に手をかける(3)気にかける、という「3つのかける」で、高齢者に、役に立っているという有用感を持ってもらうのが大事だという。

   高齢者の間に吹き始めた新しい風。これを捉え広げる工夫も必要だろう。数年前に厚労省は、高齢者のための自立支援制度を打ち上げたことがあるが、その後どうなったのか……さっぱり聞こえてこない。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2009年2月18日放送)
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