新潮「朝日襲撃犯告白」の信憑性 文春登場「元妻」がバッサリ

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   フリーター兼編集者は気楽な稼業ときたもんだと、週初め、群馬県みなかみ町の「法師温泉 長寿館」へ、週刊誌を携えて行ってきた。

   ここは明治にできた温泉宿だが、昭和57年(1982年)、国鉄のポスターに上原謙と高峰三枝子を起用してから「フルームーンの宿」として一躍有名になった。

終身雇用制、いまや夢・幻

   名湯「法師の湯」は混浴、お湯はぬるめ。大きな湯船を仕切っている丸太の上に足をのせ、窓から見える雪景色を眺めるのは至福の時間だが、今年は雪が少なく、宿を囲む山々にも黒い地肌がそこここに見える。

   翌朝の帰り際に停電のハプニング。後で聞けば、東京電力のヘリコプターが巡回中に墜落して、送電線を切ったためだったが、これが夜だったら、暖房ができなくなるのは当たり前だが、温泉もいまは電動だそうで、源泉が湯殿に流れてこないから、入浴もできないそうだ。間一髪セーフ。

   温泉宿のユルユルした時間の中で読む週刊誌記事は、「『4人殺した』元力士告白」(現代)や「天下り官僚『渡り鳥の守護神』人事院総裁の過去」(ポスト)のような尖った記事よりも、少しユルい記事がいいのだが、時節柄、そうした記事が少ない。

   どれを見ても、「サラリーマン天国」などといわれた時代が遠くなったことを感じさせる。ポストの「富士通で始まった『正社員はもう副業して稼げ』の新事態」には驚いた。電機大手の富士通の子会社で1月から、悪名高い「ワークシェアリング」を導入して労働時間を減らす代わりに、社員の副業を解禁したというのだ。

   副業にはどんなのがあるのか。コンビニ、パチンコ店の夜間清掃、レンタルビデオ店、運転代行からモーニングコールサービスまで挙げているが、いやはや、大変な時代ですな。

   朝日の大特集「こんな正社員がクビになる」を読むと、終身雇用という制度があったのは夢幻である。

   現代は相変わらず相撲協会とのガチンコ相撲に熱心だが、老婆心ながら、相撲にそれほど興味のない読者も多くいることをお忘れなく。

   「あしたのジョー」復刻版の連載を始めるそうだが、われわれの世代がジョーに熱狂していた時代は70年安保時代。いまの時代に合った新しいジョーを創造しないと、若い世代は読んでくれないのではないか。そうブツブツいいながら読み進めると、どえらい記事を発見。連載「新聞の通信簿」がそれだ。今号は、ノンフィクション・ライター魚住昭さんが、「麻生首相と部落差別」について書いている。

「雑誌を読まなければいけない」理由

   魚住さんが書いた「野中広務 差別と権力」(講談社文庫)の中に出てくる麻生発言について、「ニューヨークタイムズ」東京支局支局長が魚住さんに取材を申し込んできた。麻生氏が、野中氏について部落との関係に触れた上で「日本の総理にはできないわな」と語った、としたくだりの裏付けをとろうとしていた。麻生氏は、2005年の衆院総務委員会で発言を否定している。同紙は、魚住さんを始め関係者を取材し、1月15日付でこう書いたのだ。

「もし野中広務氏が(8年前に)日本の首相になっていたとしたら、それは日本にとって、米国初の黒人大統領が誕生したに匹敵するほど意義深い出来事になっていただろう」

   現首相にまつわるこれだけ重大な「言動」を、日本の新聞はほとんど報じなかった。「麻生首相に人権意識の欠片もないというのは恐ろしい事実である」(魚住氏)。雑誌を読まなければいけないというのは、こうしたことをいうのだ。

   それに比べ、新潮の「朝日新聞阪神支局襲撃犯の告白手記」は、どうでもいい犯人の半生を語らせ、児玉誉士夫の名前まで持ち出したが、信憑性は薄まるばかりだ。もういい加減にしたらどうか。文春が「週刊新潮『実名告白者』の正体」で、元妻からの証言として、「また何を言い出したんだろう、という感じですよ。あの人がこんな事件をできるわけないじゃないですか。根はいい人なんですから」といわせている。

   新潮では自称犯人が、「私は自分でやったことを証明するのがこれほど難しいとは思いませんでした」と弱音を吐いている。難しいことはない。その時撃たれて重傷を負った犬飼記者のところへ行き、一部始終を告白して首実検してもらうのだ。自分が犯した罪の重さを悔いているのなら、まず、被害者に詫びるのが、手記などを書くよりも先だと思う。


元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)ほか

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