<テレビウォッチ>日テレで放送したドキュメンタリー「山で最期を迎えたい ある夫婦の桃源郷」(山口放送)。2008年の日本放送文化大賞のテレビ部門でグランプリをとった作品だ。
1組の夫婦と子供たちを17年かけて取材したという力作だ。戦後間もなく、復員した夫と妻が山へ入り自給自足の生活を始める。娘3人を育てるが、一時期娘たちのことを考え大阪へ出てタクシー運転手をして生活を支えた。しかし、還暦を過ぎた夫婦はまた山の生活へと戻った。「自分らしく」生きたいという思いからだ。
3人の娘たちはそれぞれ結婚し、はじめは両親が山から下りることを望んだが、次第に親たちの生き方に共感するようになる。畑作業を手伝いに山へ行って、とにかく親に近付いていく。人生はささやかでも自分でつくるものではないか、そんなことを教わったと話す場面もあった。父と母から人生の歩み方を学んだという訳だ。
派手さはないが、夫婦の頑張りと親子の絆が、力まずに描かれていた、という点が優れたところだ。長い期間、しつこくがっちり映像を押さえており、いい作品だったと思う。テレビもまだまんざら捨てたものではないな、とも思わせてくれた。地方局が頑張ってこのような作品に取り組んでいるのはいいことだ。1時間で、というのもよくまとめたと思う。
幸せや充足感というのは心の中にある、としみじみと感じさせてくれた。番組としても丹念に努力を積み上げたことがよく分かり、感動した。
人生の 生き方見事な 親子かな