難病患者が「呼吸器はずして」 はずすと罪なのか

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   「意思の疎通が図れなくなったら呼吸器を外していただきたい」――難病のALS(筋萎縮性側塞硬化症)と闘う照川貞喜さん(68)が、かかりつけの病院に出した「死を求める要望書」である。

「他人が『生きて』というのは傲慢」

   ALSは「運動神経が侵され全身の筋肉が次第に動かなくなる」(ナレーション)。照川さんが今動かせるのは目と右の頬だけ。微かな動きを読み取るセンサーでパソコンを操作し音声に変換して意思を伝えている。この方法で2年前、要望書を作成した。病院は14人からなる倫理委員会を立ち上げて1年間、議論「照川さんの意思を尊重しないことが倫理に反する」(委員長)と、要望受け入れを決定した。が、院長は「呼吸器を外すことは刑事事件に問われる可能性が高い」として倫理委の決定容認を拒む。

   警察官だった照川さんの病が判明したのは49才のとき。3年後、呼吸器装着を余儀なくされるが、生きることに積極的だった照川さんは闘病記を出版、その中に「体は不自由でも心は自由」と書く。妻は「本人が前向きだから周りも看られた」と言う。しかし病は容赦なく進行する。声が出せなくなり、歩けなくなり、食べられなくなる。「マブタが動かせなくなれば何も見えなくなる。意識がはっきりしたまま暗闇に閉じ込められてしまうという恐怖心が照川さんを追い詰めて行く」(ナレーション)。そして「人生を終わらせてもらえることは『栄光ある撤退』と確信しています」と、最期の選択を求めるに至る。

   照川さんの要望書について、ALS患者とその家族の賛否両論を番組は紹介するが、どちらかといえば反対論に比重を置く。照川さんと家族ぐるみの付き合いがある患者は「長生きをしてもらいたい。ALSでも治る日がくるかも」とパソコンに入れる。むしろ、照川さんの家族の方が本人の意向に理解を示す。「自分が逆の立場だとしても、ずっと暗闇の中にいなきゃならないのは耐えられない。あまり長く生きていたくないと思う」(長男)。「本人以外の人間が、生きてほしいというのは傲慢だと思う。今でも辛いのに、もっと辛い思いをさせるのはすごく辛い」(妻)。結局、家族4人は「死を求める要望書」に署名する。

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