日本人の臓器移植は「日本で」 突きつけられた現実

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   海外に依存する日本の移植医療。その海外から「臓器の自給自足」を突きつけられている。WHO(世界保健機関)からも「移植される臓器は自国内で提供されるべきだ」との指導指針が出た。

   そこで番組は、なぜ海外で渡航移植の制限が広まりつつあるのか、日本で臓器提供が進まない背景に何があるのかを探った。番組を見ての結論は、日本人の死生観を含め、自給自足体制を国民全体で真剣に考える時が迫ってきているということ。

「受け入れ先」ドイツの国内事情

   「移植でしか助からないならば、渡航移植は生きる望み」。その最後の望みだった海外での移植に危機感が募っている患者や患者の家族側からの現状を見てみよう。

   脳死状態からの臓器提供を認めた『臓器移植法』が施行されて12年たつ。しかし、国内での臓器提供者は少ない。心臓が鼓動していながら脳機能が廃絶状態にある脳死。これが絶対条件の心臓移植を海外で受けた患者数は、法律の施行から昨2008年1月までの間に93人。同時期に国内で移植を受けた患者数60人をはるかに上回っている。

   日本からの渡航移植を継続的に受け入れてくれた国はアメリカとドイツの2か国だけだが、そのドイツも今後は受け入れが難しくなりそうだ。

   番組が取材したドイツのバードエーンハウゼンにある心臓病センター。10年以上にわたって日本からの患者を受け入れ、すでに15人が心臓移植を受けている。しかし、同病院の院長は最近「医療先進国の日本は外国に頼るのではなく、自分の国で移植すべきだ」と日本の関係者に指摘した。

   ドイツでも移植を求めて待機している国内の患者が、臓器提供者の数をはるかに上回ってきたからという。アメリカもまた数年前から、海外からの渡航移植受け入れ枠を半減させている。

心のケアも課題

   一方、国内の臓器提供者数は各国に比べて少ない(メモ参照)のが現状だ。法律に定める提供条件が厳しいからという指摘がある。

   また法律上の問題のほかに未解決な課題もある。重い決断をし、臓器を提供した家族のケアの問題だ。

   番組では、脳内出血で脳死状態になり、臓器を提供した若い女性患者の母親のケースを紹介した。

   まだ温かい女性の体から臓器が摘出されている間、外で待ち続けるしかなかった母親は「最後のひと時を一緒に過ごしてあげたかったという願いが叶わなかった。臓器を提供したのが正しかったのかどうか悩んでいる」という。

   キャスターの国谷が目を潤ませながらこう言った。「臓器の提供を増やしていこうとするならば、提供する家族の方々が本当に正しい選択をしたと思える環境整備からスタートすることが先決と思いますが……」。

   医学上の理屈だけでは解決できない日本人の死に対する考え方、死生観を変えるのは難しい。

   番組に出演した科学文化部の平沢公敏記者は国谷の問いに「まさにその通りだと思います。簡単に結論が出る問題ではないからこそ、国民全体で議論するしか解決の道はないと思います」と。

モンブラン

   <メモ:臓器提供者の現状>

   人口100万人あたりの1年間の臓器提供者数は、最も多いのがスペインの12.5人、日本はスペインの200分の1の0.05人。韓国と比較すると8分の1だ。日本の臓器移植法は、「書面による」本人の意思表示を条件にしている。多くの外国では「本人もしくは家族の同意」あるいは「拒否の意見がない場合は提供」となっているという。また15歳未満の場合、意思表示の有効性が認められていない。臓器移植改正案が国会に提出されているが、まだ本格審議に入っていない。

* NHKクローズアップ現代(2009年1月28日放送)

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