「近くなった」宇宙 その夢と現実

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   1月23日に種子島から宇宙に向けて発ったH2Aロケット。そのなかには、大学や高専、町工場などが開発した小型衛星が7機も搭載されていた。

   なかでも、荒川区の都立産業技術高等専門学校が制作した「輝汐(きせき)」は、生徒が町工場などのご近所(コミュニティ)の底力を得て完成したもの。「荒川の星」「荒川の夢」などと呼ばれ、美談として広く膾炙した。この出来事が象徴するように、かつて大手企業などが重厚長大的に手がけていた衛星開発が、民間ベンチャーレベルに降りてきて、小型衛星ビジネスが注目されている――と、今回の放送「小型衛星 新ビジネス 安く手軽に宇宙をめざせ」は言う。

小型衛星は「安い、早い、新鮮」

   番組冒頭のスタジオでは、小型衛星と大型地球観測衛星の「だいち」のサイズを比較。現在宇宙にいる「だいち」はCG合成で再現したものだが、「スタジオに入りきらない」(国谷裕子キャスター)ため、1/2サイズで表示したという。それでも風車小屋と電気ポットぐらい大きさが異なる印象だ。

   なにしろ、大型は高さ6m、重さは4トンで、さまざまな観測機能付き。一方、小型のなかでも小型な超小型機は40センチ、8キロ。機能はカメラで宇宙から地球を撮影できるだけだが、その解像度は昔の大型衛星にひけを取らないという。

   スタジオ出演した宇宙開発にとても詳しい室山哲也・NHK解説委員によれば、こうした小型衛星のメリットは「安い、早い、新鮮」だという。集積回路の高集積化、性能アップ、コストダウンなどによって、小型の衛星を安く作れるようになった。開発期間は従来型の8年から10年に対して、1年半から3年。そのため、大型衛星では使用した部品が完成時には古くなってしまうが、小型衛星では新たな技術を活きがよいうちに、宇宙に送り出せる。

   国内のとある気象情報会社(会社ロゴなどから、株式会社ウェザーニューズと知れる)は、北極海の氷の状態を観測するための小型衛星を、設立間もない国内ベンチャー企業に1億円で発注した。「(従来型の)数百億円では手も足もでないが、1億ならば、頑張ってチャレンジしていける」(担当者)。

   「小回りが効き、社会のいろんなニーズに応えることができる」(室山)のが小型衛星の強み。番組によれば、個別具体的なニーズを叶える「マイ衛星」ビジネスの時代が本格到来しそうな勢いである。国谷キャスターは、小型衛星打ち上げ時の映像を見たあとで、「(生徒らが)喜んでる表情を見てると(略)……素晴らしいですね」と目を輝かせて感想を述べたが、衛星(打ち上げ)もあまり身近になると夢のない話になりそうで、少々心配な今回の放送ではあった。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2009年1月27日放送)
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