「訴えられると判断できない人たち」
もう一つは、サイバー暴力のために仕事まで失った男性が裁判で立ち向かっている例だ。
大手ポータルサイトが、この男性の元恋人が自殺した事件を実名入りの写真付きで報じたことから書き込みが始まった。
「女性は妊娠していた」「女性に暴力をふるった」など。男性によると、「瞬く間にネット上で破廉恥な人間にされ、仕事を辞めざるを得なくなった」という。
男性は、書き込みをした人の責任を追及したいと調べたが、あまりの多さに断念。代わりに掲載したポータルサイトを訴えた。
1、2審で裁判所はポータルサイト側の責任を一部認め、賠償金300万円の支払いを命じた。が、ポータルサイト側はこれを不服として上告、最高裁に持ち込まれている。
キャスターの国谷が「書き込んでいるのはどんな人たちですか?」という疑問に、事情に詳しいヨムは「大人なら名誉棄損で訴えられると判断できるが、それができない小・中・高校生たちの書き込みが非常に多いと思う」と。
韓国では現在、誹謗中傷の書き込みに対して最高300万円の罰金制度が設けられ、書き込んだ人物の身分を捜査機関が確認できる法律もある。ただ、それも被害者の訴えがあって初めて捜査が開始できる仕組み。
問題になっている『サイバー侮辱罪』では、捜査機関が常時、誹謗中傷の書き込みを監視し、悪質と判断すれば被害者の訴えがなくても捜査し、逮捕できる仕組みに強化されている。
言論の自由を守りながら悪質なサイバー暴力をどうするか? ネット社会・韓国が突きつけられている課題だ。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2009年1月14日放送)