<テレビウォッチ>歯の治療で自己負担分がゼロ円という札幌市の歯科医院が、舛添厚労相まで巻き込み大騒ぎになっている。弱者救済か法律違反か、そのカラクリを番組が取り上げた。
診療代無料の手助けを行っているのは、札幌市の繁華街にあるNPO法人『CMケア機構』。患者はまずこのNPO法人の会員(入会金、年会費無料)に登録する。
年収520万円以下で、健康保険証を持っていれば誰でも入会できるが、隣接する歯科医院の治療に当たっては、ちょっとしたアンケートに答えるのが条件という。
で、アンケートに答えると治療の自己負担分と同等のカネがNPO法人から支払われる。歯科医院で治療を受けた後、それを医院の窓口で支払う仕組み。
現在、会員6000人のうち3000人がゼロ円で治療を受けているという。
そこで疑問がわくのがNPO法人の原資。収入源は、民間企業からのアンケート調査依頼などで黒字なのだという。
もともとは歯の治療を後回しにしがちな収入の少ない高齢者に、ハードルを低くしてあげようという目的から考えついたらしい。
このNPO法人の理事長(78)によると、「NPO法人を立ち上げて、弱者救済ということで病院に行けるようにする。どうやれば現行法に抵触しないでやれるのかと……」。
が、ほっとけないと地元歯科医師会が騒ぎ始めた。道議会でも取り上げられ、高橋はるみ知事は「早急に立ち入り調査の実施について検討、国や札幌市と連携を取り対応する」と。
が、対応について上田文雄・札幌市長は「あわてて白黒つけるのは差しさわりあると思う。じっくり見極めさせていただきたい」とかなりの温度差が……
さらに舛添厚労相も登場し「事態をつまびらかにして必要な指導をしたい」と。
もっとも問題がないわけではない。実は、NPO法人の理事長は歯科医院の理事長代行も兼務している。健康保険法では、患者の自己負担分を医療機関が支払う割引診療を禁止しており、NPO法人と歯科医院が一体と見なされれば違反行為となる。
だが、強気のNPO理事長は「『一体』とは何かということになる。『一体』について法の規制でどこに書いてあるのか。何もないではないか」と、へこまない。
では、スタジオのコメンテーターの意見は? まず鳥越俊太郎(ジャーナリスト)が「動機はいいと思うし、治療を受ける側はタダですごく助かる。ただ、問題は他の歯科医院との間で不公平な競争が行われること」と、まぁ予想通りの答え。
石丸幸人(弁護士)は「ポイントは『一体化』をどうとらえるか。歯科医師からの謝礼がNPO法人に流れているかどうか、アンケートの謝礼と自己負担分が連動しているかどうか、アンケートがそんなに必要性のあるものなのかどうか。実質的に一体化しているということなら違法性が起きると思う」。