<ワイドショー通信簿番外編3>将来への不安が募る中で、残酷なニュースが飛び交う朝のワイドショー。
感想やら意見を求められるコメンテイターは「専門分野でなくとも「分かりません」では済まされない。畢竟、ありきたり、その場しのぎのコメントも見受けられる。
『激怒はするな』
その中で作家、吉永みち子のコメントは、事件を表層的に捉えるのではなく、当事者側に一歩踏み込んだ見方が、聴く者を「ウーン」と頷かせる。
たとえば、最近では11月27日深夜、埼玉県で起きたタクシー運転手(47)の放火事件。妻との口論のあげく、カッとなって自宅に灯油をまいて放火、長女(16)と長男(12)を焼死させた。
子供が焼死する可能性が予測できたのに火をつける、働き盛りの男の無分別にコメントが求められ……
吉永が、作家らしく次のようにコメントしたのが印象に残った。
「まじめに一つひとつ積み上げてきた努力が否定されたと思った時に、瞬間的に吹き上げてくる感情の風はすごい。ブレーキが利かない瞬間が誰にもあるということを覚えておかないと……」
『腹を立てても激怒はするな』という教えだろう。
自分の半生を追想形式でまとめた吉永の作品『気がつけば騎手の女房』や『母と娘の40年戦争』は、何故か胸を打たれる。
誰もが共感を覚える「人間」を描き出しているからだろうが、事件に対するコメントにも、そこが感じられる。
2009年は、景気はさらに悪化し、社会不安から凶悪事件が増えるのではとの懸念もある。
「安全、安心の社会」をつくるはずの政治が掛け声ばかり。社会心理分析と併せて政治への辛口コメントをさらに期待したい。
モンブラン