サブプライムローンなんてよそごとだった。リーマンブラザーズの破綻も、「影響は小さい。日本は体力がある」といわれていた。それがどうだ。わずか3か月で「100年に1度の暴風」、誰も経験したことのない負のスパイラルが起こっている。
「アメリカの消費落ち込めば 日本の輸出落ちる」
「海の向こうの出来事が、なんでこんな田舎の小さな会社にまで……」と女性社長がいった。トヨタの3 次下請け、従業員20 人の部品会社だ。10月の売り上げは前月比30%減、11月の注文は半減した。社長はついに、従業員2人を退職、4人を自宅待機させた。
これが、いまの日本の縮図である。しかも、輸出の落ち込みは自動車だけではない。電気、半導体、機械……円高が追い打ちをかけた。1ドルが87円台(12月18日)というすさまじさ。輸出企業は減産に続いて、人を切る。まわりまわって、日雇い依存の高い物流にまで及ぶ。
トヨタが先頭を切った派遣、非正規切りは、とりわけ非情だ。派遣ユニオンの関根秀一郎書記長はいう。「労働者をモノ扱いしている。トヨタの看板方式は在庫をなくすものだが、それと同じに人間も必要なときだけ、ということ」。契約切れで寮を追い出される労働者が、全国で万の単位になりそうな勢いである。
「なぜこんなに急に?」とは、誰もがいだく疑問だ。
大和総研の武藤敏郎理事長(前日銀副総裁)は、マクロの話のあとで、「アメリカの住宅バブルの崩壊は家計を直撃した(日本では企業だった)。ために消費にかげりが出た。世界の経済はアメリカの消費が牽引しているから、その影響は世界に及んだ」と説明する。
三菱UFJ証券の水野和夫チーフ・エコノミストが示した図がわかりやすかった。それぞれのGDPに占める消費の割合(アメリカ)と輸出の割合(日本)、この2つのカーブはほぼ相似形で、日本の輸出とアメリカの消費の動きの連動が一目瞭然だ。「住宅バブルがはじけてアメリカの消費が落ち込めば、日本の輸出も落ちる」