日本の基礎研究、世界トップレベル
GM作物には、農薬を減らせる、作業の省力化、収穫量アップあるいは安定する、などのメリットがある。ただ、(1)遺伝子にバクテリアなどを使った場合の安全性に不安(2)タネと農薬をセットで売るというビジネスへの抵抗感(3)消費者へのメリットがはっきりしない。
こうした疑念に答えがないまま、GMは確実にふえている。世界のGM作物の作付面積は、この5年で2倍になった。ビジネスをほぼ独占しているのが、モンサント社(米・セントルイス)だ。昨年の売り上げ1兆1000億円。干ばつに強い作物、除草剤をまいても枯れない作物……遺伝子にはバクテリアや動物も使う。ビジネスは完全に生産者を向いている。批判もこの点に向けられることが多い。
こうした中、日本でもGMを模索する動きが出ている。茨城・つくば市で行われている実験は、飼料用に成長促進アミノ酸を増やしたコメ作り。ただ、遺伝子は同じ植物のトウモロコシからとったもの。消費者への配慮だ。
宮崎市の農家長友勝利は、GMの議論を呼びかけ勉強会を開いている。周辺には農業の将来に見切りをつけた離農が多い。「若い世代に引き継ぐには、避けて通れない」という。呼びかけに答えたのは全国から700人を超えた。近く消費者との対話を始めるそうだ。
岩永所長は、「日本は基礎研究では世界でもトップレベル。だが、実用化で遅れている。GMをひとつの選択として研究を続けるべきだ」という。
GM作物浸透の現状と自給率の低さは待ったなし。議論を始める段階に来ているのは確かなようだ。
ヤンヤン
* NHKクローズアップ現代(2008年11月27日放送)