年間約20万円減額された人も
では、なぜ徴収率にこだわったのか? 取材の結果、次の証言を得たという。
「徴収率は、都道府県及び各社会保険事務所間で競わせてきた。高ければ、予算の要求や各種要望で強く意見が言える。天下り先の確保にもなるという認識があった」
また、社保庁の徴収責任者だった幹部は「高い徴収率を維持することで大蔵省(現・財務省)に対する予算要求で強くものがいえるということがあった」という。
で、国谷キャスターが「改ざんにより受け取る年金額がかなり減っているケースもあるのでしょうか」と。
この問いに、改ざん問題を取材している飯野奈津子・NHK解説委員は「5年間も標準報酬額が改ざんされた結果、1年間20万円近くが減額された人がいました。これが生涯続くのですから大きな損害ですね」。
もっとも、記録改ざんの裏には、不況の変動を受けやすい中小・零細企業問題が横たわっていることも無視できない。
年金の保険料を滞納した場合、社保庁は財産を差し押さえ、強制的に徴収することが法律で決まっている。
しかし、差し押さえのうわさが流れるだけで取引中止、経営困難に追い込まれるのが現状。強制徴収は、現実には困難だという。制度そのものにも矛盾があるのだ。
それが分かっていながら、見て見ぬふり。高い徴収率維持という自分たちの「利益確保」もあって、経営者に一時的な制度からの「脱退」を勧めていたケースが多いようだ。
飯野解説委員は「総理大臣はかかわった職員は処分すると言っているが、それだけでは済まない……」と。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2008年11月26日放送)