5000万件に及ぶズサンな年金記録とは別に、社会保険庁の職員によって意図的に厚生年金の記録が改ざんされていた問題を取り上げた。
徴収率97%以上を維持
NHKが取材を進めた結果、矛盾を抱えた年金制度に見て見ぬふりをし、目先の「利益追求」に捉われた社保庁のズサンな管理が浮き彫りに……
「ちゃんと働いていたのになぜ年金が受け取れないのか」。東京・北区に住む73歳の男性がこう言って怒りをぶちまけた。
この男性は、自分の年金記録を見ておかしいことに気付いた。昭和29年(1954年)10月から翌30年12月までの1年2か月の間、厚生年金の資格が「喪失」されており、月額3000円、年間3万6000円分が減額されていたのだ。
しかも、一緒に働いていたはずの同僚たち中には「退職」の印も……。何故こんなことに? 同僚たちと社員旅行に行った際の写真を社会保険事務所に持参したが、「写真では、記録が間違っていた証拠にはならない」と告げられた。
すでに会社は無く、社長も亡くなっている現在、他に証明する手立てはないという。
社会保険庁の推定では、こうした改ざん数は6万9000件にのぼるという。いったいなぜ大規模な改ざんが、何の目的で行われたのか?
NHKが、社保庁の現役、OB職員に取材した結果得た答えは、厚生年金で高い徴収率(納付率)を維持する狙いがあったという。
社保庁は1970年以降、厚生年金の徴収率を97%以上維持してきたと説明してきたが、この高い徴収率は、記録改ざんが支えてきたとの疑いも出てきた。