「バブルがはじけて、ホッとしている」
「仕掛け人が値段を作っていくというのを、自分が身をもって体験した。自分がそのなかに乗っちゃってるという空恐ろしい感じが、バブルがはじけて、解除されて、ホッとしている」
その一方で、バブルは困るが、アートとビジネスは切り離せないというのが村上の持論だ。「たとえば宮崎駿さんにインタビューしたら『マーケティングは考えてない』と言うと思います。でも、優れたクリエイターはどこかで(アートとビジネスの)バランスをつくってる」「その時代に即した芸術を考え、現代と呼吸を同期させて、ビジネスもしっかり考えてやって行くことだ」
「芸術家は自分の好きなように自由に描いて、お金には無頓着というイメージが日本では強いが、そうではいけないと!?」。芸術家はそういう人たちであってほしそうに、夢心地な目で国谷キャスターが聞く。
「そうですね。絶対、そうであってはいけない」と村上は力を込める。誰も見たことのないようなアートをつくるには、膨大なコストの管理、大量のセッティングが必要になる――。もちろん、これは現代美術のひとつのあり方には違いないが、力説する村上に対して、聞き手の頷き方や合いの手は心なしか、浅めなようだった。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2008年11月11日放送)