「国が責任を持って負担すべきだ」
取材したNHK広島の戸来久雄記者は、「パートタイムで4つの学校を行ったり来たりの人もいた。しかし、みな正規採用を目指しているが、やめていく人も多い」という。国谷は、「非正規教員がふえて、教育の質は保たれるのか?」と藤田英典・国際基督教大学教授に聞いた。
藤田教授は、「質の低下はありうる」として、(1)非正規教員は研修の機会もなく、力量があっても発揮できない、(2)他の教師との連携が弱い、(3)専任教師の負担が重くなる、などをあげた。
元をたどれば財政問題だ。三位一体改革では、義務教育への国庫負担が2分の1から3分の1に減らされ、減った分は交付税として自治体にいってはいるのだが、非正規教員で浮いた予算を他にまわすというのが実情だという。
現に広島県内で、病気で欠けた理科教師の代わりが見つからず、自習を続けたあげく中間試験を見送った学校。数学の教師の穴を保健体育の教師が埋めた話があった。一方東京・杉並区は、区独自に教員研修を行って採用。プラスの配置で30人学級を増やしたりしている。財政力によるとんでもない格差……。
藤田教授は、「義務教育はライフライン。予算は国が責任を持って負担すべきだ。金も人手もかけずでは、質が保てまい」という。
教育改革は、安倍首相(当時)がイギリスのサッチャー改革を範として進めたものだ。が、サッチャーの政策は教育現場を荒廃させたとして、ブレア首相(当時)が建て直しに着手した。決め手は巨額の予算投入だった。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2008年11月6日放送)