この番組で秘書をつとめる田中裕二(爆笑問題)の発言回数は少ない。「小さな国会」コーナーでは、とりわけそうなのだが、今回は相方の太田光総理まで田中と同じように目立たなくなってしまった。その分を埋めつくしたのが、ゲストのえなりかずきである。
先(10)月、8病院で受け入れを拒否された妊婦が死亡するなど、病人の受け入れ先がなく、たらい回しにされるケースが目につく。その背景には医師不足がある(と思われる)。そこでえなりは「医学部の定員を3倍にして授業料を免除します」法案を小さな国会に提出しにやって来たのだ。
この法案、現場の医師たちの評判は悪く、おおむね反対であった。「医者を増やしても、リスクの高い外科や産婦人科には行かない」(宮島伸宣・外科医)。「皮膚科や内科が増えるだけ」(友利新・皮膚科医)。「それでも増やすんですよ」。賛成派の田中がソーリっぽく気色ばんで反論したが、肝心のソーリといえば、隣に座ったえなりを「こいつよく喋るなあ」とばかり、ぼけっと眺める気の抜けた様子も見られた。
「医者を増やすことは賛成。増やしかたの問題」と櫻井充(民主党)は言う。いかにお金の無駄なく、早く医者を増やすか、えなり法案は効率が悪いというわけだ。「税金の使い方に関して、総理のご所見をうかがいたい」と直接回答を求める。ソーリはおどけて舌を出すと、しばらく固まり、考えこんだ。その後何か言ったに違いないが、なぜかその部分――唯一の見せ場となるはずだった――はカットされていた。
そんな他人事ソーリをよそに、えなりは孤軍奮闘。声を振り絞り、投票前の『最後のお願い』を訴える。なにか、どこかの県知事にでもなりそうな勢いだ。「医療にもっとお金をつっこむべき」「いま(の医師不足)は戦争が起きたぐらいの非常事態。いろんな大事な政策があるけれど、医療を最優先してもいいのではないか」
大演説はしかし、実を結ばなかった。賛成票10対反対10の同数で過半数に届かず、ひさびさの法案否決。肩を落とし、「素で落ち込んでおります」と苦笑いする姿に、落選候補さながらの哀愁を漂わせていた。
ボンド柳生