「今夜は厳しい逆風にさらされている日本経済です」――国谷裕子キャスターの早口が一層、切迫感をもたせる。スタジオゲストは元日銀理事と紹介された平野英治。
「震度8の大地震のような感じ」
例によって、テーマのポイントをゲストに尋ねて行く中で面白い場面があった。世界経済の減速、円高の下で、「日本の経済を引っ張ってきたグローバル企業への打撃も厳しいですか」と国谷が聞いたのに対し、平野は「私もトヨタグループの中で働いているので実感しているが、グローバル企業ほど世界同時不況の荒波にもまれている」と受けた。
さらに、「これまではグローバル化の波をうまくとらえて世界的に、生産、販売を拡大し、どちらかといえば円相場も安いレベルにあって高収益に寄与した。今は、この2つのアドバンテージが失われて、厳しい逆風下にある」と言ったのだ。
以前のNHKは企業名を出すことに抑制気味だったが、最近は割と平気で放送するようにはなった。が、ここは元日銀理事で通してほしかったのではないか。ただ、会社名を明示する流れは変わらず、この日の番組でも、「大手工作機械メーカー」(ナレーション)の森精機製作所、愛知県の中小企業で「工作機械と自動車の金型をつくる」(同)富田鋳工所が登場した。いずれも輸出が売上げの半ば以上を占める企業で、ここにきて受注が大きく落ち込んでいるという。
森精機の社長は「震度7か8の大地震のような感じ」と言い、富田鋳工所の会長は「世界の金融はマネーゲーム(で動いている)。日本は物作りの国。大(企業)中小(企業)が連携して危機を乗り切って行くべき」と話した。
各国協調の施策必要
輸出に依存する日本経済の前に立ちはだかる円高の要因を、平野は「円を海外の資産に投資していた人が、海外の資産が危ないから円に戻そうとする動きが非常な勢いで起こっていること、もう1つの要素は、海外と並べてみると相対的に日本の経済がまだましで、金融市場も相対的に安定しているので、円で持っているのが安全だということがあげられる」と説明した。
さらに、経済危機への手立てについては、「各国の当局が協調して金融不安をおさめる対応を断固として打つ必要がある。そして、実体経済の調整の痛みを柔らげるためのマクロ政策、財政、金融面から出来る限りの景気刺激策を打つこと」と話した。そのうえで、「世界が協調して現代版グローバル・ニューディール政策みたいな発想で政策対応を進めることが求められている」とまとめた。麻生首相自らが発表した経済対策は、果たして課題に応えられているだろうか?
いつもながら、盛り沢山な内容で充実してはいるが、やや詰め込みすぎ。不要ではないかと思えるエピソードが散見された。
アレマ
*NHKクローズアップ現代(2008年10月30日放送)