拙著「メディアを思う日々」(ロコモーションパブリッシング刊)に、「日本一注目されない『読売ウイークリー』の研究」を書いたことがある。どうしたら、これほどつまらない誌面ができあがるのかを考えてみたのだ。その後、親しい読売新聞の幹部から、どうしたらいいのかと相談を受けたとき、いっそのことフリーペーパーにして、新聞と一緒に配れば、たちまち一千万部近い週刊誌ができるし、広告も入るはずだとアドバイスしたことがあるが、その「読売ウイークリー」が2008年12月1日発売号をもって休刊することが決まった。
「不況もの」に注目
私は常々、この国には多様な言論がなければいけないと思っている。新聞やテレビでは報じることができないことを、雑誌、特に、出版社系の週刊誌や月刊誌がやっている。大相撲の八百長問題や、民主党議員とマルチ商法業界との癒着、破綻した年金問題など、週刊誌発のスクープは枚挙に暇がない。
しかし、ノンフィクションを中心にやってきた月刊「現代」も、新年号をもって休刊する。ここ10年で、「週刊宝石」「月刊宝石」「FOCUS」「噂の真相」「ダカーポ」が休刊したが、それに代わるジャーナリズム系の雑誌は創刊されていない。
部数の低迷や名誉毀損など訴訟の多発、賠償額の高額化などを理由に、安易に(私にはそうとしか思えない)雑誌を廃刊してしまう出版社の経営陣にいいたい。広告に依存した女性誌やファッション誌を次々創刊し、それらの雑誌の売り上げや広告収入が減ったからといって、こうしたジャーナリズム系雑誌を切り捨ててしまうのは、自社の雑誌で、他社に対して声高に求めていたCSR(企業の社会的責任)を果たさないことになるのではないか。雑誌が無くなることによって、長年そこで培われてきた人脈や編集ノウハウが、次代の編集者たちに受け継がれていかないことの重大さに、気付いてないとしか思えない。
枕が長くなってしまった。今週の面白かった記事3本を紹介する。「不況もの」では好対照な、「株暴落をチャンスにかえる!」(朝日)と「現代『貧乏物語』」(新潮)。
朝日は、優良株が下がった今こそ、株の買い時だとする。目新しさはないが、確かに、トヨタ自動車の下落率が44.64%、キヤノンが46.05%と、半値近くになっているなら、ちょっと買ってみようかと思わせる。不動産も投げ売り状態で、新潟・越後湯沢の中古マンションが1戸50万円、千葉・館山のマンションが300万円台なのだそうだ。
かわる暴力団の姿
新潮の1本目は、「『麻生総理』が大好きな『アニメ』制作者の残酷物語」。長時間作業、低賃金、保険なしの過酷な業界のことを知らずにアニメ外交を打ち出す麻生首相は、マンガそのものだと皮肉が効いている。
共産党の専従職員も負けず劣らずで、ブームといわれる「蟹工船」状態なのだそうだ。出稼ぎに来ている日系ブラジル人が多い浜松では、解雇される人が増え続け、銀座でも、手取りが1万円になってしまったと嘆くホステスがいる。
石原都知事の「山谷には一泊200円~300円の宿がある」発言で注目を浴びた山谷は、日雇い労働者が減り、その代わりに、オタクの若者や外国人旅行客で満室になることもあり、大阪・釜ヶ崎にも「ハケンの若者」たちが住み始めているというのだ。
今週の一押しは、ポストの「山口組13人の直系大物組長『連名談判状』の読み方」。
直系組長の中でも大物だった後藤忠政組長を除籍したことに端を発し、この処分に異を唱える直系組長ら13人が、「連名談判状」を出し、山口組内部が大きく揺れている。
談判状には、月に納める会費が約100万円になり、五代目の時期から35万円も上がったと批判し、さらにこう書いている。「その上に雑貨屋ごとき飲料水、雑貨の購入、これは強制購入ではないか、我々は雑貨屋の親父ではない」。記事によると「山口組は06年から専用の商品パンフレットを用意し、直系組長たちに毎月、ペットボトル入りの水、歯磨き、シャンプー、石けん、洗剤、ティッシュペーパー、ボールペンなど日用雑貨を最小50万円単位で販売している」のだそうだ。現代ヤクザも成果主義をとり入れ始めたようだ。