<テレビウォッチ>とんでもないテープが出現した。17年前の1991年9月場所を前に、相撲協会が全親方と十両以上の全力士を集めた国技館での「力士・親方会」の録音だ。当時の二子山理事長が、「無気力相撲」をはげしく叱責している。無気力=八百長となると?
このテープ。現在相撲協会と講談社(週刊現代)で争われている裁判で、講談社が「八百長の証拠」として提出するという。録音したのが、週刊現代に八百長を告発した元小結の板井圭介だという。なんとも生臭い。
その思惑はともかく、テープの二子山理事長の気迫は凄まじい。
「君らよく聞けよ、親方衆。重大なことだぞ。若い親方衆、今までの相撲を見てみろ。師匠は何とも思わないか。その勝ちで喜んでいるのか、手をたたいているのか。おめでとう、おめでとうって。逆に叱らなきゃいけないじゃないか」。
次の出羽海親方(監察委員長)が、無気力相撲についてこういう。
「故意による無気力相撲が一部不心得ものによって行われるのは許されない。(勝ちを)金で手に入れることは、稽古も何もしなくていい。床山とか若い衆とか、仲介した人は、相当な処罰をする、若い衆はクビ、床山は廃業になるかもしれない」
これが事実とすれば、世間でいう八百長ということ。しかし、角界ではこの言葉は使わない。代わりに「無気力相撲」というらしい。
相撲ジャーナリストの杉山邦博は、「二子山理事長の危機感のあらわれですね、(出羽海のいう)故意にということは、わざと。それも、金銭のやりとりがあったかのようないい方をしてましたね。情けなくて、何ともいいようがない」
みのもんたは、「そうすると、八百長はやっぱりあったのかとなっちゃう。裁判に出されると影響しますね」
杉山も「心証的には、行われていたであろうと思われても仕方がない」
弁護士の道あゆみは、「この裁判は劇場化というのか、傍聴人の列が多くてびっくりしたが、本来裁判に出されるべき証拠とか証人が、マスコミに流されている。週刊誌が書いた内容が真実あるいは真実を信ずるに足るかどうかで、過去の八百長がどうとかという周辺の状況に左右されてはいけない」
与良正男は、「メディアの側からすると、この手の裁判ではメディアは苦しい。情報源を明かすわけにいかないから。まあ、講談社としてはいろいろ出していく戦法なんでしょうね」
ここで杉山が、17年前の取材ノートを出してきて、「立ち会いの待ったに罰金というのもこのとき決まった。敢闘精神欠如に出場停止とか、厳しい二子山理事長の厳しい通達のスタート」と読み上げて、「この後の9月場所の内容はよかったんです」という。
しかし、その時点ではどうやら、出羽海親方の発言は知らなかったらしい。91年といえば、若貴兄弟人気が絶頂にあったときだ。裁判はそれよりはるか前の、北の湖・貴ノ花戦の話だ。時空を超えても、同じ話が出るということは……??