「厳しい指導」上司がためらう傾向
現場の声を聞いてみよう。「任務が多様化し、隊員の心も体も疲れ切ってるなかで、すぐに退官する若年隊員がたくさんいます」。この20代の艦艇乗組員は、出航続きで、月に4日しか帰宅できないこともあったという。
任務の厳しさなどの理由から、いま海上自衛隊は「陸海空でもっとも人が集まりにくい」(NHK記者)のだという。人手不足で残った人の負担が重くなる悪循環に陥ってると隊員は言う。
「機械のメンテナンスしか考えてない。まず人間のメンテナンスをもうちょっとしっかりした方がいいんじゃないか」(中堅隊員)
こうして、海上自衛隊は蟹工船さながらの非人間的職場になってしまってる(と内部では認識されてる)ことが明らかになった。ただし、蟹工船とは大きな違いもある。若い隊員に辞められては困るので、上司が厳しい指導をためらう傾向があるらしいのだという。それがまた不祥事、事故の遠因ではないかというわけで、じつに皮肉かつ深刻な現状ではあるようだ。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2008年9月30日放送)