「E―waste」といわれる先進国からの家電廃棄物。東南アジアの途上国がこの廃棄物の処理場となっていたが、この「ゴミの山」が今や「宝の山」に変貌している。
海外に転売する業者急増
今回はこの「宝の山」争奪戦の舞台裏を取り上げた。
まず、ここ10年の希少金属の価格推移からその変貌ぶりを見ると……
プラチナは5倍以上、金やインジウムが3倍前後、ネオジムは2004年比でやはり5倍以上に高騰している。
例えば携帯電話。新型が出れば古い型を捨て買い代えるが、携帯電話1トンから得られる金の量は200グラム、金鉱石1トンから得られる金の量の100倍という。
こうして、家電部品をリサイクルし、貴重な資源を有効利用する目的で家電リサイクル法が制定され、自治体や家電販売店が回収しメーカーが再利用する仕組みが整備されてきた。
ところが、国内のリサイクル業者よりも高値で買い取り海外に転売する業者が急増。資源のない日本にもかかわらず、貴重なE―wasteが海外に流出しているのが現状という。
その流出先で最も多いのが中国。その総量は年間300万トンに及ぶと推計されている。
日本だけの回収技術
「都市鉱山」ともいわれ、積もり積もれば「宝の山」となるE―waste。付加価値の高い製品づくりには希少金属の安定確保が欠かせない日本だが、このままE―waste を海外へ流出させておいていいのか……。
ここにきて日本でも流出するE-wasteを取り戻す動きが出てきているという。番組では、台湾で、「スラッジ」(コンピューター部品の洗浄過程で出る廃棄物)の回収に取り組む非鉄精錬メーカーの社長を紹介した。
この「スラッジ」には、微量だが金や銅、その他希少金属が含まれており回収技術を持っているのは日本だけという。
ただ、そうした動きはまだ一部。国谷キャスターは「(E―wasteを)規制すればいいのではという意見も出そうですが……」と。
番組に出演した環境資源経済専門の小島道一・アジア経済研究所主任研究員は「自由貿易体制の中で規制は難しい。日本としては、再生資源の効率化を図る回収技術の開発や希少金属の供給源の多様化を図るのが重要だ」と指摘している。
使い捨てが当たり前のようになっている日本は、意識の変革がここでも求められている。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2008年9月29日放送)