「業者疑わずに検査」 農水省の「お気楽」性善説

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   「事故米」問題について国谷裕子キャスターは前振りで、「底なしの様相を見せている」と表現した。転売先業者の数は増え続け、農林水産省による実名公表後、自殺する業者まで現れた。

「うちの隠し方がうまかった」

   また、学校や保育園、病院の給食、コンビニのおにぎりなどに使われたことも判明しつつある。連日、関連情報があふれる中で番組は、発生源となった三笠フーズの巧妙かつ悪質な隠ぺい工作と、農水省のチェックが不十分だった背景を明らかにして行く。

   三笠フーズの元従業員が「農水さんが手を抜いていたというよりも、うちの会社の隠し方がうまかった」と証言する、その手口は――事故米用倉庫に保管されていた米は、本来、粉砕機で砕いて工業用にしなければならない。1回に粉砕される量は10トン程度で、作業は数日かかることもあるという。農政事務所の職員が立ち会いに来るが、「1、2時間おって帰られる」(元従業員)。粉砕されなかった事故米は、酒用倉庫の奥深く、高く積まれた酒用米の背後に隠される――福岡農政事務所の課長は「疑ってかかって立ち会いに行っているわけではない。信用出来る企業だと思っていた」と語る。建前発言なのか、認識が甘いのか。

   もともと不良品である事故米は、「各地の農政事務所にとってその扱いは悩みのタネとなってきた」(ナレーション)。購入先を探すことが骨だったのだ。

   ある仲介業者は、三笠フーズと農水省の関係を「持ちつ持たれつ」と言い、「農水にすれば、在庫はさばけるし、金は入ってくる。取扱量がいちばん大きい三笠はいいお客さんで、何に使っているかを調べてなかった」と続けた。

プレーヤーが審判といっしょでは見抜けない

   テレビの露出でおなじみになった三笠フーズの財務担当者も、積極的な買い付けを促したのは国からの働きかけだとし、「国の方も助かったんじゃないか」と話す。入札予定日を三笠の都合に合わせた農政事務所もあったそうだ。これでは、なれ合いといわれてもしかたない。こうして入手した「汚染米」を、三笠フーズは幾つかのペーパーカンパニーと仲介業者を介在させて「コメ・ロンダリング」し、多額の利益を得ていたのである。

   スタジオゲストの冬木勝仁・東北大学准教授は今回の事態を、「政府は本来、監督する立場なのに、事故米を含めた政府米の売却に関してはプレーヤーにもなる。プレーヤーが審判といっしょでは見抜けない」と解説する。

   国谷キャスターの「不正転売を防ぐには?」という問いかけに対して准教授は「1つは、政府が責任を持って、事故米の出荷段階で着色して粉砕すること。2つ目は表示の充実。買う側が産地、品種、精米年月日が確かめられるしくみをつくること。もう1つは、プレーヤーである農水省だけでは監督できないので、食品安全委員会のような第三者機関が監督に入る必要がある」と答えた。

   農水省という役所のモラルダウン、想像力の貧しさが浮き彫りになった番組内容で、それだけに、よけい今後の状況悪化が危惧される。

アレマ

   *NHKクローズアップ現代(2008年9月18日放送)

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