大分県教員採用試験を巡る汚職事件が底無し沼の状態になってきた。
2008年度の教員採用試験で得点の改ざんがあったとして採用取り消し処分を決めた小矢文則県教育長本人や元教育長らにも口利き疑惑が浮上してきたのである。
押収パソコンに改ざん前後の点数
県教委が決めた処分は、08年度に採用した76人の教師のうち20人(別に1人はすでに辞職)で、内訳は採用取り消し6人、自主退職14人となっている。
取り消しの根拠となったのは、警察に押収されていたパソコンに保存されていた改ざん前と後の得点数だけ。後は改ざんにかかわった職員からの聴き取り調査内容と突き合わせたという。
これらのうち、汚職事件との係わりがはっきりしているのはすでに辞職していた1人だけ。残る20人は、誰の口利きなのか、金銭の授受があったのかどうかは不明のままで処分に踏み切った。
番組は、このうちの1人、小学校で教鞭をとっていた20歳代の男性教師に密着取材した。
「私自身も親もコネとかおカネをだしてとか、全く身に覚えはありません。不正をしてまで先生になろうとは思いませんから」
「夢がかなって今週から教壇に立ち、子供たちが一つひとつ理解していく姿にやりがいを感じていました」
まさか自分が……と思っていたところへ、県教委の採用取り消しの通告だった。男性教師は、誰が口利きをしたのか疑問をぶつけたが、県教委の幹部は「ここはあなたの意見を聞く場ではない」と突っぱねられたという。答えられる材料を県教委側は何一つ持っていなかったのだ。
「分からない、では繰り返す」
納得できない男性教師は、大学時代に学んだ教育学部の教授を訪ね、そこで意外なことを聞かされた。県教委の元幹部だったその教授は、A4の紙1枚に卒業生14人の名前を書いたリストを県教委に送ったというのである。
この教授は報道陣に「試験の結果を早く知るために送ったので、口利きはしていない」と話しているが、不思議なことに14人中11人が合格していた。
「根が深いですね。どうすればいいのでしょう」。国谷キャスターのこの疑問に、番組に生出演した法政大学の尾木直樹教授は次のように指摘する。
「口利きの構造が分からないと言っているが、それを分からないままではまた繰り返す。20人の改ざんの背景、構造をちゃんと分析しないといけない」
県教委事務局は教育行政改革プロジェクト・チームを立ち上げたが、とても県教委だけで解決できる問題ではなさそう。まして事務局トップの教育長に疑惑が出てきた中では……。
モンブラン
* NHKクローズアップ現代(2008年9月8日放送)