インターネット上で見つけた文章やデータをコピーして自分の文章に貼り付け利用するコピー・アンド・ペースト、略してコピペが今、社会全体に広がりつつあるという。
レポートの4割がコピペ
人間の考える力を弱めると、このコピペを危険視する意見や「新たな知の技法」として肯定する意見もある中で、インターネットを通じて手軽に入手できる知識、情報とどう向き合うかを取り上げた。
まず、教育現場におけるコピペの実態から。
小樽商科大学経済学科の江頭進教授があるクラスで提出されたレポートを調べたところ、4割のレポートがコピペで作製。そこで学生たちにアンケートを取ったところ、「正直、自分の力だけでは書けない」「悪いことだという認識が少ない」ことが分かったという。
江頭教授は以後、レポート提出の代わりに、その場で考える力を養う討論に切り替えた。その江頭教授は「コピペの最大の難点は、ものを考えなくなることで、ものすごく危険なことだ」と憂慮する。
「感想文ヒナ型」へ68万通の感謝メール
しかも、コピペは小・中学生の間でも広がり始めている。フリーライターの恩田ひさとしが『自由に使える読書感想文~児童、そして生徒のための~』というサイトを立ち上げた。
サイトには、「太宰治の『走れメロス』を読んで」、「夏目漱石の『こころ』を読んで」など、小説や伝記など17の作品のヒナ型感想文が並んでいる。
学校の宿題に合わせてヒナ型を選び、そのまま書き写せば学校に提出できるのだ。
恩田によると、「夏休みを有意義に過ごしてもらいたい。読書感想文で悩む時間から解放させてやりたい」というのがサイトを立ち上げた理由らしい。
実際、利用する子供は多く、8月20日から9月初めにかけて、子供たちからの感謝メールが68万通寄せられたという。
番組では、このサイトに対する直接の反論はなかったが、番組に生出演した脳科学者の茂木健一郎は「脳の働きという立場からみると、コピペの利用は脳の成長という貴重な機会を失うと思う」と、次のように指摘する。
「脳は筋トレを同じ、脳は苦しければ苦しいほど成長する、コピペは楽でしょう。楽をしたら脳は成長しない。脳が得意なのは、情報を編集して新しいことを生み出す編集力がもっとも得意。コピペに頼り、その一番得意なことをやらないと人間の存在価値がなくなる」
そのコピペが子供たちの間で広がりつつある。しかも大人、それも文章にうるさいはずのフリーライターがコピペを子供たちに奨励していることに非常に驚きを覚えた。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2008年9月1日放送)