<テレビウォッチ>北京五輪の女子マラソン右足の外反母趾の激痛で途中棄権した土佐礼子選手は、痛みのために7月初めから1回も走っていなかった。
昨日(8月18日)に続いて『朝ズバッ!』は、途中棄権の現場で土佐選手に何があったのかを報じた。
土佐選手の右足の痛みは10キロを過ぎたところですでに始まっていた。沿道にいて土佐選手を見守っていた三井住友海上女子陸上部の鈴木秀夫総監督は「アッ、足が引っ掛かってるな……」と気づいている。
それでも土佐選手は、スピードを落としながらも、顔を歪め、口を開けたまま走り、25キロ地点で耐えきれなくなり棄権した。
沿道で取材していたスポーツジャーナリストの二宮清純はこの時の模様を次のように語った。
「ともかく彼女は体中が震えていて、涙を流していた。手助けするのが先だと思い、応援に来ていた皆で手分けして足を冷やし、近くの建物のカギをあけてもらい安静にし、救急車を呼んだ。彼女の体重は本当に軽いですよ。ここまで体を削りながら走ってきたのかと……」
沿道には同僚で、1万メートル代表の渋井陽子選手も応援していた。顔を歪めて走る先輩を見て「アー辛そう。彼女は疲労骨折寸前で、7月の頭から1回も走っていないんです」と、取材中の記者に打ち明けた。
そこまで自分を追い込み、なおゴール目指してスタート台に立たねばならなかった土佐選手。野口みずき選手の欠場に続き、自分までも辞退するわけにはいかないとの思いがあったのだろう。
鈴木総監督からはピントのずれた答えが返ってきた。「故障のないように出場へ向け練習してきた。後は本人の日頃からの粘りでカバーできると……」。
二宮は「陸連ないしJOC(日本オリンピック委員会)、所属団体・選手との間のコミュニケーションが不足している。所属団体に丸投げみたいな面がありまして、その辺が課題として残った」と。
今回の途中棄権は、所属団体も体調については選手に「丸投げ」していたように思える。元陸上選手でゲストコメンテーターの千葉真子も次のように指摘した。
「今後4年間、女子マラソンはスピードアップしてきます。今までやってきたマラソンの練習方法をもう1度見直す必要があります。選手自身も自身の体をよく知る必要がありますが、チームのスタッフともコミュニケーションをとる体制をつくらないと……」
世界のマラソン界を凌駕してきた日本の女子マラソン界。北京五輪は、全体を見直すちょうど「折り返し点」だったのかもしれない。