<テレビウォッチ>競泳200メートルバタフライで銅メダルを獲った松田丈志(24)の第一声は少し変わっていた。「不思議ですね。これが自分色のメダルです」。そして「とにかくありがとうと、早くメダルをかけてあげたい」
かける相手は、久世由美子コーチだ。そして言葉通りに、表彰式のプールサイドにいた久世コーチを抱きしめて、首にメダルをかけた。
宮崎の25メートルプールで4歳から松田を見ている。ビニールで覆っただけの素朴なプール。松田が小学5年生のころの映像があった。「5年生にしてはね」という久世コーチ。さらに本人が、「高校生と泳ぐと、ひっぱられてタイムも出るから」と答えていた。
大学に進学するときも、コーチとして久世を受け入れてくれるかどうかが絶対条件だった。中京大だけがそれを容れた。いま、名古屋で一緒に下宿生活をおくっている。旅費なんかは自分もちだという。「お母さんみたいなもの」と周囲もいう。だが、コーチになると鬼になる。
松田は、「仕事でもないし、お金でもないし、すごく温かい。ここでやっていける自信がある。自分の中で」と。久世コーチは、「アテネでは、決勝にはでたがメダルなしで、居心地がわるかった。だから今度はメダルを」という。
シドニーの北島康介がそうだった。彼もその「居心地の悪さ」をバネに今日を開いて、この朝200メートルでも2冠を達成した。松田はその最初のステップにいる。ただ、松田には、頭の上に怪物フェルプスがいた……。
白石真澄は、「精神的な支えなのでしょうね」
小木逸平も「最新の理論が久世コーチにあるわけでもない」
石丸幸人は、「オリンピックのメダルって、技術的、精神的あるんでしょうが、最終的にはこういう絆の強さ」
鳥越俊太郎も、「人間として育てたということだろうな。これから生きてくる」
同じ日、柔道70キロ級で2冠を達成した上野雅恵も柔道一家の強い絆があった。前日の谷本歩実もそうだった。