<テレビウォッチ> 「4年間すべて北京で走るためだっただけに、今も走りたい、走ろうという思いは消えることはありません。しかし、現状を認識すれば、出場を断念せざるを得ません」
野口みずきが送ってきたメッセージは悲痛なものだった。左足太股の筋肉損傷は深刻だった。笑顔の野口を写す画面が、何とも残酷に見える。なぜこんなことに、とだれもが思う。
小柄な体格を補うために行っていたという過酷なトレーニング。JOCの金哲彦・強化コーチは。「けがをするかしないかの紙一重のところで闘っているので、大きなけがにつながったのは、運が悪かった」という。
また、彼女のストライド走法は足に強い負担がかかるが、野口自身も先月末北京で、「本番をすごくイメージしてしまって、ペースがあがりましたね」といっていた。これについて金コーチは、「一種のオーバーワークだと思う。ただ、そうなるかならないかギリギリのところで闘っているから」という。
だが、小柄な身体も、ストライド走法も、世界に通用することをアテネが示していたのだから。映像で見たスイス・サンモリッツでのトレーニングは、クロスカントリーのような山道を走っていた。下り坂を駆け下りる姿は、痛々しかった。そこまでするかと。
スタジオにマラソンの谷川真理が出演した。「彼女のつらさがわかります。代表になってからの8か月間、想像を絶するトレーニングを重ねてきただけに」という。谷川も、かつてけがで大会を欠場したことがある。
小木逸平が、「北京へ行くだけじゃなくて、金メダルをとるのが目的で、とって当たり前というのはハードですよね」
谷川は「そう、金さんのいっていたぎりぎりのトレーニング。そこまでやらないと…」
鳥越俊太郎が、「サンモリッツのトレーニングは金メダルのための?」
谷川は「それはそうですよね。今日はここまでやった。もうちょっとという」「違和感があっても、重大なものかどうかは分からないんですよ」
鳥越は、「バカな質問かもしれないが、痛み止めで切り抜けられないのか」
谷川は、「微妙なところです。痛みが出ないこともあるが、それが致命傷にもなりうるし。この決断はしかたなかった」という。
補欠はいない状態で、土佐、中村だけで臨む。野口はメッセージで2人に「重荷になるのが心配だが、ご健闘を心よりお祈りします」といっている。案外これが、2人にプラスするのかどうか。レースは17日の日曜日だ。