先週、劇場で"ポニョ"を観てきた。小さな子供向けの作品の顔をしているが、そこはやはり宮崎アニメ。どんな世代が見てもそれぞれの受け取り方があるだろう。
私は観てよかったと思っている。思わず目頭が熱くなってしまった。その上で今回の「プロフェッショナル 仕事の流儀」を観ることができて、また作品に対する考えが深まった。
今回のゲストは監督・宮崎駿。今回の作品ができあがるまで、300日間を取材した内容だった。監督にとっては今回で最後の長編、と言われている(年齢的、体力的な理由も)。自信の流儀である"映画の奴隷になる"の意味が、画面からひしひしと伝わってきた。
ベテランのアニメーターが書いた鳥が監督の目にとまる。画面の一部に写る小さな鳥だ。私が見ても何の疑問も感じない。それを見て監督は「鳥を書こうと努力してないと思いますね。態度がぶれていると思いますね」。これじゃあ鳥は飛ばないですよ、と厳しいダメ出し。映画のためにどんな努力も惜しまない。スタッフもそれを理解し、全身全霊を映画にかける。
CGがほとんどのアニメ界。今回の鳥の件にしても、CGソフトを使えば処理は楽だろう。あくまで手書きにこだわる理由はなぜか、茂木が尋ねた。
「周りがみんなコンピュータになるんだったら、手書きが生きてくる可能性もあるんですよ」
それが時代の中で個性になる。「下駄の名産地に町中にあった下駄屋さんがどんどん潰れていったけど、全部は潰れない。いまだに続けたことによってその下駄屋にはお客さんが来るようになる」。流れに乗らないことで、逆に希少価値を生むと言うことか。
監督の作品作りの1つのルールを今回学ぶことができた。それは監督の中でキャラクターはのびのびと生きていること。ストーリーをはじめに作るのではなく、作るのはコンセプトだけ。実際に制作を始めつつ、ストーリーを紡ぎ出していく。中盤まで作品ができあがっていても、結末は誰も知らない。監督も知らない。アイデアを頭の中に泳がせておくイメージだろうか。このような創造の仕方はおもしろい。もちろん、誰にでもできることではないが。
慶応大學 がくちゃん
*NHKプロフェッショナル(2008年8月5日放送)