<テレビウォッチ>「弱者のために市長になったのではないですか」。千葉県銚子市で昨日(8月7日)ある説明会が開かれ、市民が「公約違反だ」と岡野俊昭市長を厳しく糾弾する一幕があった。
医師不足から赤字が累増し、唯一の市立総合病院が「9月休止」に追い込まれ、その説明会での出来事である。岡野市長は苦渋の色を顔に滲ませながら「理由は、理由は……カネが尽きたんです」と答えるのがやっとだった。
『朝ズバッ!』が「ほっとけない!」とこの問題を取り上げた。
それによると、1951に開設された銚子市立総合病院は、16の診療科があり、ベッド数も約400床という地域医療の中心的存在だった。
ところが厚労省の「新臨床研修制度」が発足した2004年4月以降、医師不足が顕在化し診療体制の縮小を余儀なくされる。しかもそれに伴い収益も悪化し赤字が累増していった。
番組では、新臨床研修制度が医師不足に結びついている経緯について詳しく触れなかったので、補足すると……
従来、大学を卒業し、医師国家試験に合格すると、医者のタマゴ達は2年間の臨床研修が「努力義務」として課せられていた。が、ほとんどは大学病院でタダ同然に酷使されているとの指摘がされ、制度が改正された。
こうして発足したのが『新臨床研修制度』なのだが、研修先の病院を医師のタマゴが自由に選択できる仕組みのために、研修先は医療設備や臨床例が充実し居心地のいい大都市の病院に集中。
一方、医師が減少した大学病院は、補充するために地方の病院に派遣していた医師を引き上げる動きも顕著になった。
結局、医師不足が顕在化したのには、研修先を自由選択制にし、一極集中を促すような制度にしたことが背景にある。厚労省も制度の欠陥を認め現在、制度の見直しを進めているという。
といって銚子市立総合病院の医師不足は止まらず、赤字は膨らむばかり。03年度35人にいた 医師は現在12人で、救急患者や入院患者を治療する体制ではないという。赤字も03年度5億円だったのが、07年度は18億円に膨らんでいる。
元宮城県知事の浅野史郎は「ここだけじゃなく全国どこでも抱える問題。医師が不足しているために、残った医師がさらに過重労働になり辞めていく。悪循環になっている」と。
厚労省の組織運営を見直す「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」の第1回懇談会が7日開かれたが、こんな体たらくでは土台づくりからやり直す必要がある。