北京五輪を前に、日本女子レスリングの現状を伝えた。4階級4人の代表はアテネと同じ。アテネでは4人がメダル、世界選手権では3人が金だった。武器はスピードのあるタックルだが、これがいま、狙われているという。
きっかけは、今年(2008年)1月の世界選手権の準決勝で、119連勝を続けていた吉田沙保里選手(55キロ級)が、ほとんど無名の米のバンデュセン選手に破れたことだった。
返しワザも評価
吉田選手のタックルは、「消えるタックル」といわれるほど鋭い突っ込みで、無敵を誇っていた。それが、決まったはずのタックルが、返しワザで2度もポイントをとられたのだった。最初の時は、はじめ審判は吉田選手にポイントを与えた。が、審判委員長から疑義が出て、ビデオで確認の結果、相手の返しワザにポイントがいった。2度目も同じだった。
これは2つの意味を持つ。ひとつは、吉田選手のタックルの弱点をつく返しワザが研究されていたこと。タックルで浮いた腰に手を回して後方へ投げるのだ。これが2度決まっていた。もうひとつが、国際的な判定基準が、返しワザも評価するように変わったことだった。
この世界選手権、アメリカは団体2位だったが、コーチは日本人の八田忠朗。日本レスリングの育ての親、八田一朗の次男で、レスリング指導で在米40年。昨年11月コーチになってまず、ビデオを駆使して日本選手を徹底的に分析した。その結果、吉田選手のタックルのくせを発見、守りの姿勢からの返しワザを十分に練習していたのだった。