「試作品」では選手動けなかった
なぜこんな水着ができたのか、また日本でできなかったのかについて、山本浩NHK解説委員は、「国際水連が11月に水着のレギュレーションを改定した。日本メーカーはその読み方が甘かった」という。
スピード社は水着を専門に、いわばF1カーみたいなものを作った。一方日本メーカーは他の運動具も作っているなかで、高級車みたいな水着を作っていた。F1カーが現れて、「え? あんなタイヤ使っていいんですか」と言ってるようなものだというのだ。
で、カメラはイギリスのスピード社に入った。開発プロジェクトは3年前から始まった。人間の身体を極限まで抵抗をなくすために、航空機技術者まで動員したという。
責任者のジェイソン・ランスが、これまで公開したことがないという試作品を見せた。締め付けの強いグレー部分が多く、プールで選手が動けなかったり、身体にあざができたりするほど。グレー部分を少しづつ小さくし、理想の体型と動き易さのバランスから今の水着になったのだという。
ランスは「技術で競泳のレベルを向上させようとしている。選手にもいいことだ」という。
鈴木は「水泳は身体ひとつの競技だけれど、これまでは浮力と推進力で競ってきた。その浮力を水着がやってくれると、あとは推進力。泳ぎが変わるかも知れない」という。
ただ、スピード社の高速水着は高価なので、着られる人と着られない人の不平等があったりしては興ざめだ。国谷裕子がいっていた、「スタート台で、だれがどの水着かを見ることになる」というのは、間違いなさそうだ。
ヤンヤン
※NHKクローズアップ現代(2008年7月2日放送)
<メモ:北島選手の世界新と水着>
平泳ぎの北島康介選手が2008年6月、200mで2分7秒51を出した。同選手が過去5年間に縮めたタイムは0秒58だったが、スピード社製の水着を着た今回は、高速水着で一気に1秒33も縮めたのだった。北島選手のような完成度の高い選手ほど、大きな記録更新はむずかしいものだ。