「核」は大丈夫か
一方、核の脅威も拉致と同様、日本にとっては切実な問題だ。北朝鮮に「完全な申告」(ブッシュ米大統領)を求めていたにもかかわらず、急ぐあまり核兵器は含まれず、ウラン濃縮計画やシリアへの核技術協力についても曖昧に。
「史上最低の大統領」という汚名を受けないよう、ブッシュ政権が実績づくりのために拙速に走ったと見られている。
そうした内々の事情に翻弄されている日本。いざというときに助けてくれる「日米同盟」が、片思いの幻想にすぎないことを暗示してはいまいか。
かつて、帝国海軍の将校だった人が、タメ息をつきながらこう話してくれたことがある。「戦前は、中国や旧朝鮮の船が無断で、日本海の領海内に入ったことは一度もない。恐ろしくて入れなかった」。
それが今や、韓国や台湾、中国の密漁船は日常茶飯事、かつてほどでないにしろ、北朝鮮の工作船が出入りしていないという保証はない。
戦前の軍国下の状態を賛美するわけではないが、「国境なき日本」の状態をいつまで続ければ気がすむのかと言いたくなる。今回は、米国依存体質からの脱却を真剣に考える好機、拉致問題はその試金石といえる。
モンブラン
*クローズアップ現代(2008年6月30日放送)