溶ける「ヒマラヤ」 災害防止に挑む日本チーム

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氷河湖決壊で21人死亡も

   なぜ、ヨーロッパアルプスの氷河などより、ヒマラヤ氷河の融解が急速に進むのか。総合地球環境学研究所の中尾正義名誉教授は、アジア特有の気候と関係があると、次のように説明する。

「ヨーロッパアルプスの氷河は冬の間の降雪で氷河が拡大するが、アジア特有の夏のモンスーンによる雨が、ヒマラヤの場合は雪となり氷河が拡大してきた。それが、温暖化によって雪が雨に変わるようになった」
「また、それ以上に融解の速度を速めているのは、降雪で真っ白に覆われ、太陽光線を効率よく反射していた氷河の表面が、降雨によって氷の表面が露出し、逆に太陽の熱を吸収、融解を速めている」

   恐ろしい話だが、差し迫った問題はその融解水で出来た氷河湖の決壊。既に、ブータンのルゲ氷河湖が1994年10月7日に決壊、洪水が発生し21人が死亡している。

   氷で堰き止められ決壊の危機にさらされている氷河湖が現在、ヒマラヤには9000か所に達しているという。その1つで、もっとも決壊の危険が高いと言われているイムジャ氷河湖に2008年4月下旬、日本の研究チームが入山した。

   地球環境学の専門家で、慶応大の福井弘道教授をリーダーとするチーム。目的は、氷河湖の観測・警報システムの構築。決壊の危険をいち早く察知し、流域の集落に携帯電話やパソコンで知らせ、災害を食い止めようという狙いだ。

   科学技術文明が招いた、計り知れない温暖化の影響。現実の問題として自然界から突き付けられているにもかかわらず、エゴをむき出しのCO2削減交渉。

   7月の洞爺湖サミットは、日本のリーダーシップは勿論、アメリカ筆頭に大国の姿勢が試される。

モンブラン

*NHKクローズアップ現代(2008年6月23日放送)

文   モンブラン
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