医者不足「数」だけ増やせばいい? ツボは女性医師活用だ

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   医師不足がいわれて久しい。政府はきのう(6月17日)医師の増員をはかるために別枠予算を確保する方針を明らかにしたが、この問題、実は単なる数の問題ではない。出産・子育ての年齢にある女性医師の現場復帰の難しさが、結果として医師不足を招いている現状がある。

出産後、パートが30%

   例として取り上げた川口市立医療センターは、地域の救急・高度医療の要。小児科の金子節子医師の勤務時間は過酷だ。当直勤務は18時から翌朝の8時まで。この間外来の患者は途切れることなく、救急患者もこなし、さらに担当の入院患者も診る。体力・気力のある30代までの女性医師が、どこでもいちばんの働き手だ。

   しかし、女性医師が出産後どんな仕事をしているか。岡山大学の調査では、30%がパート、50%が開業で、病院はわずか20%、うち当直勤務をしているのは9%にすぎなかった。子育てと病院の長時間勤務の両立の難しさをあらわす数字である。

   理由は、(1)体力的に続かない(2)他の医師に気兼ね(3)無理に戻ってもまわりに迷惑--など。女性医師がふえるなかで、こうした状態が続けば、病院の空洞化は避けられない。各地で続く小児科・産婦人科の閉鎖は、そのあらわれだ。

   大阪厚生年金病院の清野佳紀院長は、「一度家庭に入ったあと、また当直や救急の現場に戻るのは並大抵ではない。子育て支援の策を即刻整える必要がある」という。

   試みも始まってはいた。足利赤十字病院では、13人の女性医師がいるが、3年前から希望する医師には長時間勤務をさせていない。内科医の島田瑞穂医師は、産後復帰にあたって、勤務を月-金の9時から17時までに限定、代わりに手間のかかる初診患者の診察を担当した。他の医師は当直はふえるが、飛び込み外来が減って、予約患者に集中できる。

開業医が交代で当直

   もうひとつが、清野院長の大阪厚生年金病院。ここの産婦人科では3年前から、子育てで抜けた女性医師の代わりに、地域の開業医が交代で当直をしている。3人が出産という非常事態で、産婦人科崩壊の瀬戸際で出たアイデア。いま外部の医師10人が参加して、当直の70%をカバーしているという。

   その1人、開業医の沢渡善治医師は、「地域全体を守るため」という。地域の産科医はもともと、分娩はこの病院に移すことが多かった。その病院がなくなると地域全体が立ち行かなくなるというのだ。

   この協力態勢の結果、長時間勤務に歯止めがかかり、出産数もふえていま年間700人。若い医師もふえたという。清野院長は「医師の多い都市部だから、これができた」という。

   さらに「短時間なら働ける女性医師はいる。だから多目に医師を集めてみんなでやるといい。これがチーム医療につながる」と。国が打ち出した医師の増員策についても、「減っているのは勤務医。これがふえるように。勤務医の環境を魅力あるようにする施策が必要ですね」

   答えのいくつかは見えた。しかし、勤務医の環境は医療制度にも関わる。国が出てくると、話は暗くなってしまう。

                                 

ヤンヤン

<メモ:女性医師の結婚と医師不足>

   いま、20代の医師の35.3%が女性だ。これは1975年の3倍になり、なおふえつつある。が、この年代は結婚・出産・育児の時期でもある。出産のあと、多くの女性医師が現場復帰を望みながらできずにいる。それが、さらに医師不足を生むという悪循環を招いている。

*NHKクローズアップ現代(2008年6月18日放送)

文   ヤンヤン
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