なんとも難しい題材を選んでしまったものだ。だってこの国では、総理大臣とヒーローのイメージはおよそかけ離れているから。
それでも主人公の朝倉啓太(木村拓哉)が2世で、事故死した父の跡を継ぐべく無理やり立候補させられてしまう導入にはすんなり入っていけた。選挙ポスターを見て思う。こりゃ絶対当選するわ、カッコイイもん。おまけに父の不正を認めて謝罪する街頭演説。今時こんな真っ正直な姿を見せられたら、私だって1票入れちゃうかもしれない。
議員になったら、マスコミに「国会王子」ともてはやされ一躍人気者、ありそうだ。総裁選に担ぎ出されるのも、党が次の選挙に勝つための捨て駒だったのね、なるほど。と、思わせておいて実はすべて総務会長・神林(寺尾聰)が陰の総理として実権を握るための策略だったとは。ブームに踊らされる国民、勝馬に乗ろうとする議員たち、党の利益しか考えていない幹部……うまいな、この脚本。
と、ここまではパロディとして楽しく見ていたのだが、いざ総理になっちゃうと、あまりにもカッコいいスーパーマンぶりにやや引く。ダム建設のため海にクラゲが大量発生し漁業ができなくなったと国を訴える住民訴訟。分刻みのスケジュールの合間に、夜も寝ないで膨大な資料を読み、国の非を認めようとする啓太。それはいいけど、「国に責任があるのなら、財政が破綻しても償う」って、えーっ、そうなの? そのシワヨセはどこへ? すべて税金じゃないの。そもそもダム建設を進めたのは誰? それによって得したヤツだっているだろうに。
続く第5話では、なにやらドタバタコメディ風。大丈夫か? いくらアポなしとはいえアメリカの通商代表が訪ねてきているのに、身内のもめごとの方が優先されちゃうなんて、ありえない。
だけど後半、私の心はちょっと動いた。強硬に輸入拡大を迫る通商代表に「NO」と啓太。米国を敵にまわすのかという脅しに対して、とことん話し合い、共に考えることを説く。「そうすれば……」の言葉に「わかりあえる」と続ける秘書官(平泉成)。だが啓太は、「そうではなく、相手と自分とは違うということに気づくのだ」と。
意見が合わないからと切ってしまうのではなく、お互いに考え方も事情も違うことを理解したうえで、では、その相手にわかってもらうにはどうしたらよいかを必死に考える。大切なのは相手と共に生きよう、繋がり続けようという意志なのか。
木村くんの言葉はとてもわかりやすく、説得力があった。絵に描いたような理想的な政治家。キレイごとだ、ウソっぽいとツッコミながら見ているけど、その中に一つでも心に響く言葉、シーンが残せたら、作り手は「してやったり」なのかもしれない。この物語をどこに着地させるつもりなのか。志をきっちり見届けたいと思う。くれぐれも、ただのラブストーリーにはしないでね。
※CHANGE フジテレビ系 月曜夜9時~