「雑種だから治療はいいです」に怒り 異色獣医師の闘い

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   「猛きん類」という言葉にピンと来ない人も多いかも。鷲や鷹などの大型の鳥のことで、生態系ピラミッドの頂点に立つ動物のことらしい。今回のプロフェッショナルは、北海道・釧路でその猛きん類を相手に向き合う獣医師・齊藤慶輔。

   動物界のブラックジャックの異名を持つ彼。番組中では高圧電線に触れ、感電した鷲の治療に向かう姿があった。焼けただれ、動くことが出来なくなった鷲。猛きん類は家畜等と違い、治療マニュアルは存在しないという。今までの経験を手がかりに、あらゆる手を尽くす。止血剤、抗生物質、ステロイドなど、鷲につながれた管を通して薬剤が投入される。

   野生の動物の力は強い。ボロボロになりながら、治療されながら、必死に動こうとする。餌も食べる。齋藤は言う。「自分で『治る』力があるはずですから、それをアシストする。うちらが『治す』なんていうおこがましいことじゃないんですよ。手助けする。それがうちらの仕事」。

   彼の動物を治そうとする原動力はどこにあるのか。その1つに、大学を出て働き始めた動物病院での出来事がある。ある日乳ガンの犬が運び込まれた。放っておけば転移し、死に至る。手術や抗ガン剤での治療はできる。

   しかし飼い主が言った言葉は「雑種だから治療はいいです」。

   やるせなさを感じたという。血統書付きの犬には金は出せるけど、雑種だから出せないと言うのか。こういう飼い主はごまんといるのだろう。怒りを通り越してため息が出る。

   だから彼は、治せるものはあきらめたくない。強い動機に動かされて彼は命を救う。僕には彼がブラックジャックではなく、『白い巨塔』の里見先生に思えて仕方がなかった。ひたむきに命と向き合いつつも、現実と戦う。医師のかがみのような人だと、僕は思う。

文   慶応大学・がくちゃん
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