スピリチュアル・ブームの舞台裏に迫る」というのが番組の惹句だった。前半はスピリチュアル(占い、前世、霊、ヒーリング)にハマる人たちが3人登場。これまで年齢でいえば10代20代、性別では女性が多かったスピリチュアルマニアだが、今は30代、40代、男性が『急増』してるのだという。それを反映して登場者の男女比は2:1。仕事の悩みを抱える中間管理職と40代のベンチャー企業経営者だ。
ベンチャー社長は20代で大企業から独立、10年で社員80人を抱えるようになり、事業は成功続き。ところが、あるとき新規事業に失敗し、大きな損失を出して自分の能力の限界を感じる。そのとき「プラスアルファの世界をコントロール」する力に惹かれるようになった。
なぜその先生?
今では人事異動や投資など重要な判断を迫られると、占い師やヒーラーに助言を求めるという。「先生だと何でもわかるだろうなという安心感があって、隠すことなくオープンになれる」
大物の占い師は大物経営者との付き合いをほのめかしたりするが、実際に経営者の口から語られるのは珍しい。しかし、匿名、モザイク、音声加工の3点セットによってリアリティーがそがれ、語りの内容も具体性に欠けた。どんな「先生」なのか、なぜその先生なのかといったあたりも不明で、どうも迫り足りない。
そんな思いをよそに、番組は「ブームの背景」にさっさと軸足を移す。成果主義や人間関係が希薄化した現代日本人の孤独や不安が見え隠れしてるそうだ。あとは、ゲストの精神科医で立教大学教授の香山リカがその線に沿った講釈を長々と聞かせてくれる。最後に、悪質商法で高額グッズなどを売りつけられる「問題点」があることを添えておしまい。
さぞ驚きに溢れたバックステージツアーが見られるものと期待したが、終わったあとは無言でさっさとほかのアトラクションに移動したい気分だった。スピリチュアル・ブームに乗ったお手軽なテレビ番組が一時期よくやっていたが、それをお手本にしたのだろうか。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2008年6月10日放送)