蒼井 優はかわいいなー。ふにゃーと柔らかそうで、それでいて凛としていて。東京下町の老舗料亭「一升庵」を舞台に、大酒飲みで天然キャラの若女将おせん(蒼井)と、彼女を取り巻く人たちが織り成す人情ドラマ。
もう、蒼井 優が見たくてチェックしているといっても過言ではない。はじめはサイケな着物にマフラーという珍妙なスタイルがトレードマークなのかと思ったが、シックなのもバッチリ、着物を見ているだけでも楽しい。給仕する時に結った髪を胸元にたらしているのは、いささか気になるけど。
次々と登場する料理にも目を奪われる。お造りの美しさはもちろん、とろろ飯や賄いのハンバーグ、味噌汁……どれも食材を慈しむ心、もてなしの心に溢れていて、描かれるエピソードとともにじんわり幸せな気分で満たしてくれる。
圧巻は土鍋で作るすき焼き。ごった煮ではなく、厚切り牛もも肉、豆腐、みず菜を、素材の良さを生かしつつ、順に煮込んでいく。肉のうまみの染み込んだ揚げ豆腐の美味しそうなこと!
寒い日にお通しの代わりに出されるアツアツの茶碗蒸し、部位ごとに味を生かす形に切り分けられた刺し身、手作りの箸……大切なのは職人技ではなく、お客さんが何を求めているか察知する心、魂に届く味って、そういうことなのね。
ところで、ここにもう1人の登場人物、板前見習のヨシ夫(内 博貴)。これが料理人ドラマには欠かせないナマイキ盛りで。指輪したまま包丁を握ろうとしたり、気に入らないことがあるとすぐに飛び出したりするし、甲高い声でいちいちシャシャリ出て来るし、かなりイラつく存在。
「味いちもんめ」「バンビーノ」と見てきている私には、この手の若造は親方にこっぴどく叱られ雨の中で土下座というシーンがないと、どうにも納得いかない。だが一向にそんな展開にはならず、それどころか先輩にタメ口きいたままいつのまにか馴染んでるし……。うーん、甘やかしすぎだ。
それでも、おせん曰く「褒められれば嬉しい。嬉しければもっと人をもてなそうという気持ちが湧いてくる」。うまいもんを食べさせて誰かに喜んでもらいたい。それこそが原点で、育てるべきはまずその心か。忍耐、忍耐。
こういうドラマを見ると、名だたる料亭ならば、高級な食材以上に手間ひまかけての心づくしや食文化の粋を味わわせてほしいと思う。なのに、食べ物の使いまわしなんて話を聞かされちゃったら、たとえ一生そんな店に行く機会がなくても、そりゃ怒るよね。