ランキングに支配される日本人 出版界への逆風

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   慢性的な不況の出版の世界に、ひとつの変化が起こっている。本の選び方、売り方が「売り上げランキング」で動いているというのである。

沢山の人が読む「何かいいんだろうな」

   4月に閉店したある老舗書店は、別に大型店を展開しており、ここでは全く違うやり方をしていた。これが実に面白い。

   毎朝届く新刊は約2000冊。それらをどこに置くかは、売れ行きに直結する。使うのはコンビニなどで売り上げ管理に使うPOSシステムだ。本の背表紙のバーコードにあてると、売れ行き情報が瞬時にわかる。

   ピピッと2回鳴ると、「平台」と出る。最も目立つ場所に置けという指示だ。1回は「背表紙を見せて本棚に置け」、3回鳴ると「抜取」の指示。つまり返品である。情報は取り次ぎ会社の最新ランキングによる。この店では、5000位以下を「抜取」に設定しているという。

   このランキングというヤツ。会社や店によって少しづつ違うし、必ずしも正確ではないのだが、多くの人がこれをもとに本を買っているのは事実。町の声も「沢山の人が読むということは、何かいいんだろうなと」「標準になってる」「ランキング以外の本は手にとらないかも」といった調子だ。

   1996年をピークに売り上げの減少はとまらず、この間に中小書店の数は半分になった。ところが一方で、出版点数はずっと右肩上がりで、10年前の年間6万点が、いまは8万点、日に220点だという。これはどういうことなのか。

ブランド志向なのか

   フリー編集者の仲俣暁生は、「不況だからふえる。長く置けないから、沢山置く。それと出版界の代金決済の特殊事情がある」という。ランキングについても「ある程度しょうがない面があるが、本が本来の売場に並んで、売れている本の隣の本に目が向くような環境作りが重要だ」といった。

   こうした流れに抗してできたのが、「本屋大賞」だ。本屋の店員が読者に勧めたい本、ということで毎年10冊をノミネート、1位に大賞を与えている。今年は伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」だった。

   ところが、受賞後売り上げが伸びたのは大賞の本だけで、2位以下はまったく伸びていないという。これが新たなランキングになってしまったという皮肉。売れる本はますます売れ、もれた本は消えていく。

   番組は最後に、オリコンが新しいランキングをつくっていると伝えたが、見ているうちに、「なんだ一種のブランド志向ではないか」と嫌な気分になった。日本人は、自分の好みも自分で決められないのかと。そういえば、ネットを手がかりにベストセラーを連発する人がいる。ランキングの裏側ものぞいてみたくなった。

                                      

ヤンヤン

  

<メモ:出版界の不況>
   昨2007年1年間に倒産した出版社は66社で15年ぶりの高水準だ。かつては優良といわれた草思社も08年1月、約22億円の負債を出して、民事再生法の適用を申請した。時間をかけていい本を作り込むことで知られ、「声に出して読みたい日本語」などベストセラーも多い。皮肉なことに、同社は10年前のクローズアップ現代で、不況のなかで元気な出版社として紹介されていた。それが「売り上げランキング」の前では、最良と思われていたやり方が通用しなくなっていたのだ。

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