裁判官に逆らえない「裁判員」 意味あるか

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   国民の皆が刑事裁判に参加し、被告人が有罪かどうか、有罪ならどのような量刑かを決める裁判員制度が2009年5月21日から実施される。

   今回の『あなたは人を裁けるか』は、「健全な市民の社会常識を裁判に反映」という制度導入の目的が果たして実現可能なのか、「冤罪」の恐れや「死刑事件」にかかわる負担を課すことへの疑問など、悩ましい問題を提起した。

主婦の意見「新鮮だった」

   このなかで、とくに印象的だったのが制度導入の主目的である「社会常識の反映」が果たして実現できるのか。番組は、プロの裁判官の「意見」に引きずられてしまう「素人裁判員」の実情を浮き彫りにした。

   5月に東京地裁で行われた模擬裁判。妻が暴力を振るう夫を刺した殺人未遂事件の裁き。

   経緯は、子供の受験をめぐる口論のすえ、「父親の資格がないと」という妻の言葉に逆上した夫が、何度も妻を殴打。我慢の限界を超えた妻が、包丁立ての1番奥にあった刺身包丁で、全治6か月の重傷を負わせたというもの。

   普通の裁判なら実刑が相当というこの裁判。検察官は、妻が鋭利な刺身包丁をとったのは強い殺意の表れと懲役6年を求刑。これに対し弁護士は執行猶予を求めた。

   この模擬裁判に参加した30人の「裁判員」は、6人ずつ5グループに分れ、プロの裁判官とともに評議に入った。

   番組がクローズアップしたのは、あるグループの50代の主婦の意見。主婦は、妻が鋭利な刺身包丁をとったのは強い殺意の表れという検察の意見に「取り出し易いから使ったので、強い殺意とは言えない」と反論。他の「裁判員」からも同じ意見が相次いだ。

   これに対しプロの裁判官の1人が「自分たちとは違った視点で、新鮮な意見だった」と評価したものの、別の裁判官の「どちらにしても被害者がケガをしたことに変わりはない」という発言で議論は打ち止め。この段階での実刑支持は、6人のうちわずか1人だった。

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