この番組の太田光総理(爆笑問題)は実名という大いなるリスクを背負いつつ、自分の意見を表明し、闘い続けている――。少なくともご本人の認識ではそうなる。
しかし、そのわりには番組内には敵が少なく、あまり攻撃は受けない。無論マニフェストをめぐって意見が対立する場面は多々あるが、総理が「そんなことネェだろ」などと言い捨てたり、一見失礼で挑発的な発言、態度を見せたりしても、政治家などの対決相手はあまり火がつかず、総じて大人な対応である。
対ホストよりもゲストの与野党議員同士、宮崎哲弥ら評論家の言い合い、煽り合いのほうが活発だったりする。それがこの番組の少々物足りないところだが、いったいなぜこうなるのか。もしかしたら彼らは内心「お笑い相手にムキになっても益なし」と総理をバカにしてるのかもしれない。その点で言えば、今回登場した『論客』は、総理自身との堂々たる対決姿勢が鮮明で見応えがあった。
タレントの千秋が持ち込んだ法案「学校と通学路いたるところに監視カメラを設置します」に対して、反対派席の中央には、近年にわかにぶり返し、いや盛り返してきた狂言一家の和泉親子である。
セッチーこと和泉節子は滔々と教育論を展開する。「この地球上で生きているのは人間だ(機械ではない)。大事なのは親兄弟、先生、人間同士のコミュニケーション」だから、カメラなどという機械に頼ってはいけないのである。「カメラのないところでやればいいと、(いじめなどが)陰湿化する」と息子の元彌も援護射撃。
千秋をバックアップする総理も負けじと言い返す。「お嫁さんとコミュニケーションとってくださいよ」。しかしセッチーは1歩も退かない――どころか、さらに攻勢に出た。「(機械に頼る賛成派は)根本的に『人間とは?』を忘れてる」「日本人の教育を根本的にやり直さなければダメ」。いまこそ機械から人間らしさ、日本らしさを取り戻そうと呼びかけたのである。
「どうするの。アンタがやるのその教育!?」と総理がまたもヤジを飛ばすと、「その通りです」と認める日本のグレートマザー節子。
「冗談じゃないよ。アンタになにが教えられるっつうんだよ!」。元彌を視界に入れつつ、ソーリは興奮して吠えた。これにはセッチー、「あら失礼ね」と表情を曇らせ、総理を指さして問いただす。「日本女性のたしなみってわかってます?」
「わかってないよ、そんなの」との返答に「あ、じゃあ、もう太田総理は失格!」とまるで待ち構えていたように断を下すのだった。
「もうちょっと冷静に……」と議長役の森富美アナが割って入り、残念ながら子供の口喧嘩はそこで幕を閉じた。なお、セッチー迫真の訴えにもかかわらず、投票の結果は法案可決となってしまった。
ボンド柳生