MRJ(三菱リージョナルジェット)――三菱重工が関発を進める国産ジェット機を取り上げた。
試作機が完成していない中、今年(2008年)3月末までに一定の受注を得ることが事業化の条件だった。ギリギリの3月27日、ようやく全日空から25機の受注を受け、事業化にこぎつけた。
YS―11の教訓
スタジオゲストの航空ジャーナリスト前間孝則によると、欧米2社、国内2社の受注が当初、三菱の目標だったが、全日空から信頼を得たことは、ほかのエアラインへの影響も大きく、合格点を与えられるという。
しかし、リージョナルジェット市場は、ブラジルのエンブラエル、カナダのボンバルディアが独占、ロシア、中国のメーカーが参入を目論んでおり、先行きは不透明だ。
1962年に開発されたYS-11が赤字を重ね、11年で撤退した後、日本の航空機メーカーは、欧米の下請けとして技術を継承、一応、高い評価を受けてきた。
YS-11の撤退の前例にも拘わらず、敢えて開発に乗り出す背景について、前間は、今後自主開発・下請けのどちらもリスクが大きいと指摘した上で、ならば主導権を握る形で自主開発を進める方を選んだ、と解説した。
切り札はこれだ
厳しい生き残りレースの切り札となるのが、「炭素繊維複合材」だと、番組は案内する。
「鉄の10倍強く、アルミの6、7割の軽さ」(前間)がセールスポイントの複合材は航空機に最適で、日本は7割のシェアを誇ってきたが、高価格がネックだった。しかし、素材メーカーの協力を得て低コスト化を達成。MRJの主翼と尾翼、機体の30%に使用し、燃費効率を30%改善できることが売りで、全日空との成約でも決め手の一つとなった。ところが、ボンバルディアが、機体の46%を複合材にすると挑戦してきたのだ。
MRJ統括の宮川淳一は、「複合材はそんなに簡単にできない。作れるものならつくってみろ、という感じ」と対抗心をむき出しにする。が、ライバルは強力で前途は必ずしも楽観できない。
MRJ成功のカギを国谷裕子キャスターに問われた前間は、10-15年は赤字覚悟の三菱側を孤立させないため、経済産業省など国全体のバックアップが必要とした。そのうえで、「日本の技術力をもってすれば世界からの受注を獲得できる」と展望し、その波及効果で日本産業の高度化を図れる、と期待を寄せて結んだ。
パリの航空ショー、シンガポールでの販売交渉、インディアナポリスの展示商談会と、海外取材にカネと時間をかけるのは、NHKならでは。つい、勤務時間に株取引し、インサイダーにうつつをぬかす人たちを思い浮かべてしまった。
アレマ
<メモ:三菱リージョナルジェット>
航続距離3000キロ、座席数70-90、想定価格40億円の小型旅客機である。総開発費1500億円、官民共同の大プロジェクトで、国が3分の1を負担する。2003年に計画がスタートした。2011年に初飛行、2013年に就航が予定されている。