切り札はこれだ
厳しい生き残りレースの切り札となるのが、「炭素繊維複合材」だと、番組は案内する。
「鉄の10倍強く、アルミの6、7割の軽さ」(前間)がセールスポイントの複合材は航空機に最適で、日本は7割のシェアを誇ってきたが、高価格がネックだった。しかし、素材メーカーの協力を得て低コスト化を達成。MRJの主翼と尾翼、機体の30%に使用し、燃費効率を30%改善できることが売りで、全日空との成約でも決め手の一つとなった。ところが、ボンバルディアが、機体の46%を複合材にすると挑戦してきたのだ。
MRJ統括の宮川淳一は、「複合材はそんなに簡単にできない。作れるものならつくってみろ、という感じ」と対抗心をむき出しにする。が、ライバルは強力で前途は必ずしも楽観できない。
MRJ成功のカギを国谷裕子キャスターに問われた前間は、10-15年は赤字覚悟の三菱側を孤立させないため、経済産業省など国全体のバックアップが必要とした。そのうえで、「日本の技術力をもってすれば世界からの受注を獲得できる」と展望し、その波及効果で日本産業の高度化を図れる、と期待を寄せて結んだ。
パリの航空ショー、シンガポールでの販売交渉、インディアナポリスの展示商談会と、海外取材にカネと時間をかけるのは、NHKならでは。つい、勤務時間に株取引し、インサイダーにうつつをぬかす人たちを思い浮かべてしまった。
アレマ
<メモ:三菱リージョナルジェット>
航続距離3000キロ、座席数70-90、想定価格40億円の小型旅客機である。総開発費1500億円、官民共同の大プロジェクトで、国が3分の1を負担する。2003年に計画がスタートした。2011年に初飛行、2013年に就航が予定されている。