冒頭、児童ポルノのDVDが1枚数千円で売っているというので、驚いた。なぜそんなことが? 児童ポルノ禁止法があるだろうに。
同法は、他人への提供やネットでの公開を禁止している。しかし、これがほとんど野放しに近い状態。おまけに、持っているだけでは罪にならない。温床はこれだと番組はいう。
取り締まりするもいたちごっこ
インターネットの野放し状態は確かに深刻だ。警察庁の依頼で監視している「インターネット・ホットライン・センター」によると、通報は月に100件、削除させたサイトは昨2007年340あった。しかし、実態はすぐに別のサイトができるいたちごっこ。
そして買う人間は罰せられないからだと。ちょっと待て、売ることは「提供」じゃないのか? 持ってても罪にならないのは、G8では日本とロシアだけなので、これが児童ポルノの氾濫を助長し、新たな被害者を生んでいると、アメリカなどから批判を受けているのだという。そこで目下法改正にむけて検討が進んでいる。ポイントは「単純所持の禁止」だ。
どこまでを「所持」とするかは微妙な点で、岩城正光弁護士は、「アメリカでは犯罪と結びついた子どもの行方不明が毎年2万3000人を越すという深刻な状況が根底にある。運用とは区別すべきだろう」とことわったうえで、「日本でも、単純所持を禁止すべきだ」という。「供給する側だけ取り締まってもザルだ。需要側も規制しないといけない」
もっと過激な画像があるのでは…
岩城弁護士の視点は、もうひとつの問題、幼い被害者に向けられる。「児童ポルノは、性的虐待そのものです。子どもの性が金儲けの餌食になっている」という。番組がとりあげた2人の女性の手記は悲惨なものだった。1人は親戚に6年間性的虐待を受け、写真に撮られた。もう1人は、父親に撮られた写真が、ネットに載っていたのを発見したというのだ。
ともに今は大人になっていながら、心身に深い傷を負っているが、こうした子ども達のケアをする態勢はまだない。「家庭崩壊のこともある。保護と自立支援の人材の育成が必要」と岩城弁護士はいう。
取材に応じた40代の男性の話がショックだった。「(画像は)100万はいかないが、数十万枚はあった。動画は2000―3000持ってた。もっとかわいい、過激なものがあるんじゃないかと、やめられない」。もうほとんど変質者ではないか。
ネットには危ないサイトが掃いて捨てるほどある。そういう雑誌もある。しかし正直、問題がここまで深刻だとは思わなかった。同時に、「なぜこんな初歩的なことを今ごろ?」という疑問も抱いた。まずは「持つことは悪」という概念の確立だろう。法改正までの時間が惜しい。
ヤンヤン
<メモ:単純所持の禁止 米国の状況>
アメリカは1982年に「単純所持」を禁止し、現在はサイトにアクセスしただけでも罪になる。FBIは専従班がおとり捜査までして徹底的に取り締まっている。映画のシーンさながらに、ピストルを振りかざして家へ踏み込むのである。「所持はやがて犯罪につながる。FBIが抑止力になっている」とFBIの担当者はいう。
しかし、この効果の裏で、えん罪の発生が指摘される。ある少年は、覚えのないポルノ画像の所持で逮捕された。実はコンピューターウイルスの感染で、勝手に画像がダウンロードされていたことがわかって、助かった。もし「無実」が証明できなかったらどうなっていたのか?