今回のクローズアップ現代は、『シリーズ地球温暖化 日本の戦略』の1回目として、日本政府が掲げている『技術力を生かした温暖化対策』を取り上げた。
国内外の思惑が錯綜
政府は地球温暖化が主要議題となる洞爺湖サミットで、2050年に温室効果ガスの半減を目指す長期目標を提示するとともに、その手法として産業分野ごとに排出削減量をはじき出して積み上げるセクター別アプローチを掲げている。
同時に、優れた省エネ技術を持つ日本など先進国が途上国に技術移転し全体の排出量を減らす案も提示してきた。
番組は、その優れた省エネ技術の例として、日中合弁事業として中国で実施されている製鉄所の廃熱を利用した発電技術が、CO2削減に大きな効果を発揮している実態を紹介。
また、長期目標の実現には革新的な技術が不可欠とし、政府が選定した燃料電池など21の革新技術にも触れた。
確かに、オイルショックを契機に産業界が力を入れてきた日本の省エネ技術は、世界をリードしていることは間違いないのだが、温室効果ガスの国際枠組みづくりとなると国内外の思惑が錯綜し、政府の思う通りには行かない。
「日本がリーダーシップをとれるか、ルールづくりで制度設計の能力が問われていますね」という国谷キャスターの問いに、生出演した日本総合研究所の寺島実郎会長の答えは説得力があった。
「マネーゲームへ傾斜」の危険
寺島会長はまず日本の立場に触れ「12年までに90年比6%削減を約束しているのに、06年は逆に増やしている。産業別積み上げ方式でどう総量目標に近付けるかその整合性が問われている段階だ」。
さらに「国別総量目標を決めるトップダウン式も日本政府が掲げるボトムアップ式のセクター別アプローチの結果は同じ。いずれにしても産業別に落とし込まなければならないし、アプローチの整合性が問われているのが現在の局面だ」と指摘。
そうした前提に立った上で、寺島会長は「問題は、日本が掲げるセクター別アプローチで積み上げた数字が、最終的に国別総量目標に近づけるのかどうか、まだ明確でない」と。
その一方で、既に欧米で行われている温室効果ガスの排出権取引について「マネーゲームに傾斜しかねないある危険をはらんでいる」と警告もしている。
日本としてどう主張していくか。寺島会長は「革新的技術を開発するには金がかかる。むしろ国境を越えたマネーゲームにセーブをかけるためにも、たとえば為替取引などに課税し、その分を環境対策に向ける仕組みが必要だ」という。
そうした財政措置として『国際連帯税』の発想が出てきているという。「日本はそうした流れに阻害されるのではなく、むしろ先頭に出てルールづくりに参加する姿勢が今、問われていると思う」と指摘した。
モンブラン