納期より大事なことがある
実は、ジュネーブへ出品予定のスポーツカーが、完成を前にしたころ、アルミの研磨が、デザインどおりには仕上がらず、失敗を繰り返す。担当の今野智(46)は、塗装でなんとかクリアしようとする。大手メーカーの試作車づくりを続けた彼は納期をなによりも大事にしてきた。それで信頼を得、受注を獲得してきたからだ。そんな今野に対して奥山がおくったメッセージはこうだ。
「納期が大事なのではない。大事なのは、自分が納得できるものなのかどうか。それこそがブランドになる」
今野は24年間の職人生活で培ったすべてをかけて、ひたすらアルミを磨きつづける。そして、3月4日、ジュネーブのモーターショー会場で、外国人から「君がチーフエンジニア? すばらしい仕事だね」と称えられ、恥ずかしげに頬笑む彼の姿があった。
奥山は、「高校野球で甲子園に出たことのない人が、一躍、大リーグに来たみたいなもの。大したもんですよ、本当に」と笑顔で語る。
国谷によると、岩手発、1500万円のスポーツカーには20台の受注が入っているそうだ。
ゲストのコンサルタント藤巻幸夫が話すように、「日本のものづくりのすばらしさが端的に表された」番組内容で、30分弱が短く感じられた。
アレマ
<メモ:奥山清行> 1959年、山形県東根市生まれ。武蔵野美術大学卒。スポーツカー以外にも、家具、絨毯、鋳物などのデザインに取り組む。
文
アレマ