事業者側の姿勢
ただし、このまま放置しておくと、鉄道事業者はアルミなどの材質による車両の軽量化、スピードアップで大量輸送に走り、ひとたび事故が起きれば大惨事になりかねない。
米国では、すでに「事故は起こりうるもの」を前提に、車両の強度を重視し、細かな強度基準を設けている。しかも皮肉なことに、米国で使用されている、強度の高い通勤車両の30%は日本のメーカーが製造し輸出している。
メーカー側では、日本の車両に応用されなかったのは、事業者側の姿勢の問題という。
研究会はスタートしたばかりだが、クリアすべき問題も多い。費用対効果から「強度には限界もある」と前出の河合課長は指摘する。赤字経営に苦しむ事業者が多いなかで、強度基準を設け一律に義務づけるわけにもいかないという。
また、最も気がかりな新幹線はどうなのだろうか。確かに、ち密な事故防止策が取られていることはわかる。これも「事故は起こさないもの」という考え方なのか。そして強度は二の次なのか。
残念ながら番組では在来線だけを対象にし、新幹線については一言も触れなかった。
モンブラン
<メモ:従来の国内鉄道安全対策>
これまで取り組んできたのは、速度を自動的に制御するATS (自動列車停止装置)やATSと連動して複雑な列車の運行を正確に管理する信号システムの整備。その結果、死者10人以上の重大列車事故は、1970年代から80年代には年間20件以上あったのが、2000年に入って年間5件以下に減少、世界で有数の事故が少ない国という評価を得ているという。