救急医療危機を追った第2弾。テーマは「119番の見直し」だ。国谷裕子が「限られた医療資源」という言葉を何度か使った。救急車、救命隊員、ベッド数……限りのある中で、119番を利用する側の変化が、システムを追い詰めている。
現場で断るの「難しい」
高度な第3次医療が必要な患者でなくとも、患者として運び込まれれば、医師は手をとられ、ICUはふさがる。その結果、第3次医療が必要な重篤な患者が入れなくなったら「それは(患者の)死を意味します」と医師はいう。こうしたケースが多いと番組は指摘する。
理由のひとつは、重篤ではない患者向けの第2次救急病院の減少だ。この10年で8%も減った。「2次で足りるとわかっていても、3次へ運ばざるをえない」と救急隊員はいう。
そして急増しているのは、事故ではなく急病だ。お腹が痛い、頭痛がするといわれても、どこへ運ぶか救急救命士が判断しないといけない。走り出す前に問診をするので、病院への搬送が、平成になって10分遅くなっているという。
東京消防庁の救急相談センターの調べでは、救急車を呼ぼうか迷った人のうち、実際に救急車が必要だったのは、12.8%にすぎなかった。
同庁はまた「救急搬送トリアージ」という新しい試みを始めた。7つの軽症(手足の切り傷、やけどなど)を基準に、現場で同意があれば、引き返すというものだ。「緊急性がないときは、運ばないこともありますよということ」と同庁はいう。が、実際に適用したのは半年間で100件、わずか0.02%にすぎなかった。「現場で断るのがいかにむずかしいか」
コンピューターで判定
番組はアメリカ西海岸のワシントン州キング郡(人口200万人)の試みを紹介した。通信司令室に救急の要請があると、担当者はマニュアルに従って、軽重を判断する問診を行う。訴えの内容をコンピューターに打ち込むと、画面に質問項目が現れ、順に聞き進むと救急度が判定できる。
判定によって、出動する救急隊員は2段階にわかれていて、重症・緊急の場合は高度の医療が可能なチーム(ALS)、軽症の場合は必要最小限の処置ができるチーム(BLS)。さらに軽度のものは、24時間OKの看護士の相談へまわす。
これによって、同郡では心臓停止の救命率40%という結果を出しているという。帝京大学救急救命センターの坂本哲也教授も、このアメリカの試みを評価した。「緊急性のある人を最優先できる仕組みがいちばん。これまで消防は運ぶ、医者は待っているものだったが、医師が地域全体に目を向けることが必要だ」と。
アメリカの例は、徹底したトレーニングをした上での運用だった。こういう制度を日本にすぐ持ってくるには難しい側面もありそうだが、そうした検討は番組ではされず消化不良だった。もっと突っ込んで欲しかった。
ヤンヤン
<メモ:救急レベル>(1)初期救急(診療所など)、(2)第2次救急(入院、手術が必要)、(3)第3次救急(重篤な患者)--の3つがある。が、番組によると第2次の患者が第3次の施設へ運ばれることが多い。大阪・泉佐野の第3次救急病院では、この5か月に運ばれた193人のうち78人、実に40%が第2次救急で足りる患者だった。