堺正章のしつこいギャグが苦手である。だからこれも好みじゃないかもと思いながら見ていたのだが、意外にも面白い。ヒロインの夏川結衣がカワイイのだ。
レコード会社役員の立木正午(堺)は、バツイチ独身の60歳。ある日、池に落ちて溺れかかったところを助けてくれた女性、長野かえで(夏川)に一目惚れする。
しかし、いくら目の前で意識を失ったからって見ず知らずの男性を自宅に連れて行って介抱はしないだろ。せいぜいお巡りさんを呼んでくるくらいだ。おまけに下着まで着替えさせて、私は出掛けるから帰るときは鍵をポストに入れていってなんて、無防備にもほどがある。といちいち突っ込んでいたら、ドラマは始まらないのだが。
かえでは35歳、再現ドラマ専門の売れない女優。居酒屋でアルバイトをしながら食いつないでいる。寄ってくる男といえば、バイト先で「おかあさんのよう」となついてくる年下男や、小説家志望と言いながら何も書いていそうもない、くされ縁のダメ男・龍彦(徳井義実)くらい。チュートリアルの徳井くん、チャランポランな役がピッタリ。笑顔はキュートだけど、どう転んでもコイツとは幸せになれそうもない雰囲気を醸し出す。
珍しくアルバイトに出掛けた龍彦のためにいそいそと料理を作ってみたりするかえで。味見をすると「ふつう」。なんだか親近感がわく。ストレス解消にさっと温泉に行ってアワビなんかパクついている「アラフォー」の人たちより、応援したくなる。
一方の正午、彼女を食事に誘うのはいいが、いきなり花束もって自宅に行っちゃうのは引くなあ……。年齢の負い目からか、恋心とは裏腹にダメ男とかえでの相談役になってしまいそう。
堺正章は、老けてるんだか、若いんだか。顔がちっちゃくて貧相にも見えるけど、元妻役の夏木マリと並ぶと粋でお似合い。若者ファッションもそれなりに着こなしちゃうのは、さすが。でもまだ、恋する姿がかわいいとか、切ないという思いには至らない。
地位やお金は持っていても、かえではそれに目が眩むタイプではなさそうだし、優しいだけでも物足りない。この恋、どうなるのか。田村正和がやれば勝って当然の役、西田敏行だったらどこかで見たような感じ。堺正章だからビミョーで予測がつかない。正午がステキに見えたら、このドラマは成功なんだろうな。
かつて「結婚できない男」で、イヤミなヘンクツ男の阿部寛が女性(夏川結衣)にプロポーズしたのを見て思わず号泣しちゃったみたいに、見ているこちらが主人公をどれだけ愛しく思えるか、お手並み拝見。